アイカ工業株式会社様
Web業務システムのモダナイズ化により、業務部門からの要望に対し柔軟に対応できる仕組みが実現
- 導入したソリューション
- ITモダナイゼーション
- キーワード
- 業務システム、ITモダナイゼーション、マイクロサービス
導入前の問題
- Web業務システムが老朽化し、安定した機能・サービスの提供が難しくなっていた
- システムのブラックボックス化が進み、業務部門からの要望への対応が困難に
- セキュリティ面ではサイバー攻撃に強く、堅牢性の高い仕組みが必要
導入後の効果
- Web業務システムの刷新し、高品質で保守性の高い仕組みを構築
- システムのモダナイズ化により、業務部門の要望へ容易に対応できるように
- 強固なセキュリティ対策を確保し、情報漏えいやサイバー攻撃のリスクが軽減
導入のきっかけ
老朽化したWeb業務システムのモダナイゼーションとセキュリティ強化を検討
情報システム部長
DX/業務効率化支援グループ長
沖永 剛義 氏
設立当初から培ってきた樹脂合成技術を核に、「化学」と「デザイン」のシナジーで社会の要請に応え、着実な成長を続けてきたアイカ工業。現在、同社は「アイカ10年ビジョン」の第2フェーズにあたる中期経営計画「Change & Grow 2400」を推進中で、2024/3期の売上2,400億円を目指し、経営基盤の強化を進めています。そのマテリアリティの1つ「DX推進」を掲げたことを受け、2021年10月には情報システム部内に「DX/業務効率化支援グループ」を新設。現在はDX/業務効率化支援グループが業務部門を支援しながら、デジタル技術を活用した情報基盤の構築、自動化・省力化、データの蓄積と活用、働き方改革などに取り組んでいます。
しかしその一方で、ビジネスを支えるWeb業務システムは老朽化が進んでいました。同社では基幹システムにSAP ERP(ECC6.0)を利用していますが、Web業務システムはこれと連携するシステムで、支店・営業所などで働く業務部門のスタッフがフロントエンドで利用するものです。受注、見積、納期回答、配送、購買などの機能があり、約1,500名のユーザーが利用しています。
同社はWeb業務システムを2006年にスクラッチで開発し、10数年にわたって利用してきました。その間、2012年にサーバーを更新したものの、大掛かりなミドルウェアの更新やアプリケーションの改修は一度も実施していません。結果、システムの老朽化が進み、業務への悪影響が無視できないものになっていました。この点について情報システム部長の沖永剛義氏は「長年にわたる運用でシステムの肥大化・複雑化が進んでいました。また、構築時を知るエンジニアも少なくなり、ドキュメント類の整備が追いついていないという問題もありました。こうしてシステムのブラックボックス化が進んだ結果、業務ユーザーからの要望にも応えられず、ずっと改修が凍結されていたのです。これにより、ビジネスや業務の変化に対応できなくなり、経営の足を引っ張りかねない状況に陥っていました」と語ります。
そこで同社は、サーバーの保守切れを機に、Web業務システムを全面的に刷新することにしました。新たなシステムでは、現行機能を確実に踏襲しつつ、アーキテクチャのモダナイズ化とセキュリティ強化を目指すことにしました。
「従来のシステムは、受注、見積、配送などすべての機能が一体となったモノリシックなアーキテクチャで、相互の影響が大き過ぎるために改修が困難でした。そこで新システムでは、個々の機能が独立しながら連携するマイクロサービスアーキテクチャを目指すことにしたのです。これなら、機能単位で開発、変更、運用が可能になり、機能拡張や処理量の拡大にも容易に対応することができます。さらにセキュリティ面も考慮し、サイバー攻撃に強く、堅牢性の高い仕組みを導入することにしました」(沖永氏)
システムアーキテクチャのマイクロサービス化
※マイクロサービスアーキテクチャとは…アプリケーションを複数の小さいマイクロサービスに分割し、それぞれを連携させることでソフトウェア機能を実現するものです。従来のモノリシックアーキテクチャは、すべての機能が同一のプロセス内に存在するため、プロセスの一部に障害が発生した場合、アーキテクチャ全体に影響を及ぼします。また、アプリケーションの機能追加や改善においても、複雑化したアーキテクチャはコストや負荷がかかります。一方、マイクロサービスアーキテクチャは機能の要素を分解して実装し、1機能1プロセスが基本となります。そのため、メンテナンスやテストが容易で、開発期間の短縮につながります。また拡張性も高く、ビジネスに応じてスケールアウトすることが可能です。
導入の経緯
マイクロサービス化に向けた具体的な提案を評価し、コベルコシステムをパートナーに選ぶ
新たなWeb業務システムの開発にあたり、アイカ工業は複数のベンダーに声をかけました。それらから出てきた提案を検討し、最終的にコベルコシステムをパートナーに選定しました。
「その理由は、当社の求める『システムの老朽化対応』、『セキュリティの強化』、『次世代につながるITモダナイゼーション』の3つの要件を満たしていたのが、コベルコシステムの提案だけだったからです。他社の提案の多くが既存のアーキテクチャのまま移行するものだったのに対し、コベルコシステムはマイクロサービス化に対して具体的な提案を行ってくれました。加えて、同じ製造業である神戸製鋼所のシステムを手がけている実績もあり、今後の製造DXへの技術支援という意味でも期待がありました」(沖永氏)
現行要件を確実に継承するため、業務部門からメンバーを招き細かく整理
プロジェクトは2019年1月からスタートし、要件定義、設計、アプリケーション開発、インフラ構築、テスト、移行を経て、2021年5月にサービスインしました。なお、本プロジェクトと並行してSAP ERPのバージョンアップも行われたのですが、WEB業務システムとSAPは密に連携していることもあり、こちらもコベルコシステムに支援を要請することに決めました。
今回のプロジェクトは規模が大きいため、万全を期してIT要員を拡充し体制を整えました。要件定義のフェーズでは、現行要件を確実に継承するため、業務部門からもメンバーを招いて、業務フローや業務プロセス、データ要件などについて細かく整理しました。
「要件をゼロから再整理したことで、抜け漏れや間違いがなくなりました。また、この行程でメンバー間の相互理解が深まり、高品質のシステム構築につながりました」(沖永氏)
一方で複雑なシステムゆえ、新旧比較テストでは苦戦を強いられたともいいます。
「旧システムを理解している人が社内に少なく、テスト要員も限られていたため、比較結果を確認するのに苦労しました。そこで私たち自身でテストケースを作成し、それに従って1つひとつ地道にテストすることで問題を解決しました」(沖永氏)
データ移行についても、その量が膨大だったため、当初は1週間以上かかる試算が出ました。そこで、本番移行のダウンタイムを短縮するさまざまな工夫を行い、結果的に4日間で移行を終えることができました。移行翌日には全社を臨時休業とし、移行時に出てきた問題をすべて解消して安定化を図っています。
プロジェクトスケジュール
導入の効果
業務部門からの要望へ容易に対応できるシステムが実現
アイカ工業はWeb業務システムを刷新したことで、当初の要件に挙げた「システムの老朽化対応」、「セキュリティの強化」、「次世代につながるITモダナイゼーション」の3つが実現し、業務部門の要望にも容易に応えることできるようになりました。
「これまではシステムの改修が困難だったため、ユーザーはExcelでデータ管理ツールを作成し業務に対応していました。しかし今では、迅速にシステムを改修しデータ連携することができます。実際、業務部門からはさまざまなリクエストが続々と届いていますので、順次対応していく予定です」(沖永氏)
セキュリティ面も大幅に強化されました。新システムではデータベースがネットワークから切り離され、アプリケーション以外から重要なデータを抜き出したり、改ざんしたりすることができないようになりました。監視ツールも導入し、不正アクセスがあれば即座に対処可能です。外部からのアクセスも外部クラウドで一本化し、サイバー攻撃を受けるリスクを軽減しました。
「セキュリティについては当社もかなりこだわっており、コベルコシステムにはさまざまなわがままを聞いていただきました」(沖永氏)
今回、Web業務システムの刷新とSAP ERPのバージョンアップという一大プロジェクトを成し遂げた開発チームは、経営層からも高く評価されています。
今後の展望
Web業務システムの機能強化を通じ、中期経営計画のさまざまな戦略に取り組む
アイカ工業では今後、Web業務システムの機能強化を通じて多様なビジネスニーズに対応しつつ、中期経営計画のさまざまな戦略に取り組む予定です。
基幹システムについては、SAP S/4HANAへの移行も視野に入れています。現在、コベルコシステムにアセスメントの提案を依頼している段階で、着実に準備を進めていく予定です。
同社は本プロジェクトにおけるコベルコシステムの成果を高く評価し、今後にも期待を寄せています。
「難易度の高いプロジェクトでしたが、逃げることなく正面から立ち向かい、最後まで誠意を持って対応していただきました。今後は工場のDXにも取り組んでいきたいと思いますので、製造業に強いコベルコシステムのノウハウを活かした情報提供をお願いします」(沖永氏)
左からコベルコシステム 吉田(担当PM)、アイカ工業 沖永氏、コベルコシステム 伊藤(統括PM)、藤井(担当営業)
※この記事は2021年11月時点の内容です。
導入された企業様
(メラミン化粧板)
アイカ工業株式会社
設立:1936年10月20日
所在地:愛知県名古屋市中村区名駅1-1-1 JPタワー名古屋26F
URL:http://www.aica.co.jp/
資本金:98億9,170万円
売上:連結1,746億2,800万円、単独986億3,600万円(2021年3月期)
従業員数:連結4,796名、単独1,228名(2021年3月末現在)
〈事業内容〉
化成品・建装建材の製造・販売
〈会社概要〉
1936年10月、愛知時計電機から化学部門が分離独立し、愛知化学工業として設立。1966年に社名をアイカ工業に変更する。現在は化成品と建装建材2つのセグメントで幅広い製品を展開しており、化成品セグメントでは、1936年に日本で初めてユリア樹脂接着剤を開発して以来、化学合成技術で時代をリードする商品を開発してきた。現在は機能材料にも領域を拡充し、木材加工、建築・土木、自動車、電子材料、工業製品、日用品など活躍の場は多岐にわたる。一方の建装建材セグメントでは、メラミン化粧板を中心に、住宅、商業施設、医療福祉施設、教育施設、公共施設など、あらゆる建築物へソリューションを提案している。
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