日本トムソン株式会社様

日本トムソン株式会社様

SAP S/4HANAへの移行を4カ月前倒しで実現、安定稼働を実現し、社内IT人材も大きく成長

導入前の問題

  • 国内外の拠点で導入したSAP ECCのサポートが2025年に終了
  • 運用安定化のため、月1回程度の割合で再起動が必要
  • SAP ERPの活用を強化する上で社内IT人材の技術力向上が不可欠
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導入後の効果

  • グローバル規模のSAP S/4HANAへの移行を、4カ月前倒しで実現
  • 基幹システムの安定した稼働が実現、パフォーマンスの大幅な改善も可能に
  • プロジェクトを通じて社内の人材が大きく成長
ベアリング(軸受)および関連機器などの製造販売を行っている日本トムソン株式会社(以下、日本トムソン)。同社は、国内外の拠点で導入したSAP ERP Central Component(以下、ECC)のサポートが2025年に終了するのを前に、その先手を打つかたちでSAP S/4HANAへの移行プロジェクトをスタートさせました。パートナーには、過去4年間にわたりSAP ERPの導入・展開で伴走してきたコベルコシステムを選定。海外拠点を含むグローバル規模での移行を、当初の計画より4カ月短縮して1年9カ月で完了させ、安定した経営情報基盤を実現しました。これにより、パフォーマンスの大幅な改善が可能になるとともに、他システムとの連携も容易になっています。さらには、プロジェクトを通じて社内の人材も大きく成長しました。

導入のきっかけ

SAP ERPの導入と運用から得た経験と知見をベースに、SAP S/4HANAへの移行を決断

1950年に設立された日本トムソンは、日本で初めてニードルベアリングを自社開発した高度な技術力を活かし、高品質・高性能なベアリング製品を市場に提供してきました。同社の製品は半導体、ロボット、工作機械、医療機器、輸送用機器等、さまざまな分野で広く活用されており、海外の売上比率が50%を超えるなど、グローバル展開も進んでいます。

かつての同社では、国内の基幹システムがホストコンピュータベースで構築されており、スクラッチ/パッケージのシステムが混在していました。また、海外のグループ会社は個別に基幹システムを導入・運用しており、その仕様はバラバラでした。

相宮 孝行様
情報システム部
部長
相宮 孝行 氏

こうした環境を統合し、ビジネスのグローバル化を推進するため、同社は2016年よりSAP ECCの導入プロジェクトをスタート。コベルコシステムをパートナーに選定すると、ベトナムの生産会社を皮切りに、国内外の各拠点へSAP ERPの展開を進めていきました。その意義について情報システム部 部長の相宮孝行氏は「SAP ERPの導入により、グループ全体で基幹システムの統合を進めることができました。現在、一部海外拠点のロジスティクス機能の切り替えを残し、SAP ERPを積極的に活用する活用するフェーズへ移っています。今後、海外拠点のシステム切り替えが進むことで、システム連携によるさらなる情報共有、生産、販売体制の強化に貢献することが期待されています」と語ります。

このようにSAP ERPの活用が進む同社ですが、導入当初から課題として存在していたのが2025年のSAP ECCのサポート終了(取材時点においてサポート終了は2027年)への対応でした。そこで同社は2020年4月、SAP ECCからSAP S/4HANAへの移行プロジェクトをスタートさせたのです。

「SAP S/4HANAへの移行はSAP ECC導入当初から視野に入れていましたが、いつ移行するかまでは決めていませんでした。しかし、SAP ECCの導入や運用を進めていく中で、私たちも経験を積み、プロジェクトのマネジメント、開発のノウハウ、トラブルの解決方法などの知見を蓄積してきていました。システムも安定的に運用できていたため、これならいけるという手ごたえを感じ正式に移行を決断しました」(相宮氏)

導入の経緯

過去の実績を評価しコベルコシステムを選定、共に学び理解を深める

長谷川 一樹 様
情報システム部
情報システム第2課
課長
長谷川 一樹 氏

日本トムソンでは、SAP S/4HANAへの移行において、専用ツールの利用を検討しましたが、多額のコストがかかることからSAPの標準移行ツールを利用することにしました。そして、プラットフォームは、同社で既に使い慣れているクラウド基盤として、Microsoft Azureを選択しました。

移行のパートナーは、過去の実績を評価し、引き続きコベルコシステムに支援を依頼することにしました。情報システム部 情報システム第2課 課長の長谷川一樹氏は「コベルコシステムには、SAP ECCの導入・運用で、4年間にわたり一緒に走ってきたことで信頼感がありました。今回の移行プロジェクトにおいても、SAP S/4HANAについて共に学び理解を深めていきました。そういう意味では、ユーザーとSIerの関係というより、良きパートナーといった方がいいかもしれません」と語ります。

森山 太郎 様
情報システム部
情報システム第1課
課長
森山 太郎 氏

移行の具体的な流れは、まずはバージョンアップによってどのような変更点があるかを洗い出し、パターンを分類します。次に、分類されたパターンごとの手順書を準備し、一斉に開発へ取り組みました。データの抽出(クエリ)やテーブルの置き換えといった簡単なものや、データ分析ツールのBO(BusinessObjects)まで含めると、開発したプログラムの総数は400本近くに及んだといいます。情報システム部 情報システム第1課 課長の森山太郎氏は「移行に際しては、ユーザーとの調整も重要ですので、SAP ECCとSAP S/4HANAの機能の違いを一覧表として作成し、コンセンサスを形成しながら進めました。おかげで、大きなトラブルもなく移行プロジェクトを推進できました」と振り返ります。

なお、本プロジェクトには、同社の社内スタッフの育成というもうひとつの目的もありました。同社では、SAP ECCの導入時から社内IT人材の技術力の向上に力を注いできましたが、今回もプロジェクトの実務を通じ、ノウハウの蓄積を図ることにしたのです。

「プロジェクトでは社内スタッフがアドオン開発の多くを手掛け、全体から見て7~8割を内製化し、その検証まで実施しました。この経験を通じて、スタッフ全員が技術者として大きくスキルアップしたと思います」(相宮氏)

今回の移行は、国内外の拠点で同時に実施しました。トライアルを3回プラスα実施し、問題なくいけると判断。2022年1月、当初のスケジュール期間を4か月短縮する形で移行を完了しました。また、海外についてはコベルコシステムが紹介した現地ベンダーに展開を依頼し、連携についても問題なく完了しています。

「コベルコシステムはSAP ERPに関することはもちろん、開発のノウハウも教えてくれましたし、私たちが困ったときには適切なタイミングでサポートしてくれたので、非常に助かりました」(相宮氏)

導入の効果

安定稼働が実現しパフォーマンスの大幅な改善が可能に、人材も成長

今回の移行により、日本トムソンの基幹システムは大幅に安定化しました。これまでは月に1回程度の割合で再起動を行っていたのですが、それが一切なくなったといいます。また、クラウド環境への移行により、BCP対策の強化にも繋がりました。

「加えて、SAP S/4HANAは他システムとの連携に必要な多くのインターフェースを備えているので、Excelなどとの双方向のデータ連携が容易になりました。UIやデータ処理方法はSAP ECCを継承して移行しているため、パフォーマンスについては最大限に活かせているとは言えませんが、SAP S/4HANAの機能を活かすようにリエンジニアリングを実施すれば、数倍から数十倍に改善できることを確認しています。現在は、コベルコシステムのサポートを受けながらチューニングを進めている段階です。これまで分割していた処理を一括で処理するなど、データ処理量を大幅に高めることで、必要なデータを必要な時にいつでも確認できるようになり、経営判断のスピードアップにも貢献できると考えています」(長谷川氏)

またプロジェクトを通じて、同社の社内スタッフも著しい成長を見せました。

「チームのメンバーだった者がリーダーに、リーダーがマネージャーにといったように、一つ上のポジションを任せられるようになりました。コベルコシステムのプロジェクト・マネジメントに関するノウハウは素晴らしく、実践の中でトラブル時の仕分けや対応手法を学べたことは、今後さまざまなかたちで活かせると思います」(森山氏)

今後の展望

システム連携を含むSAP S/4HANAの活用を拡大し、グローバルビジネスを推進

今回のSAP S/4HANAへの移行により、システム連携における制約がなくなり、連携の幅が拡大しています。

「クラウド環境へと移行したことで、24時間フルに機能を使えるようになりました。リソースの自由度も格段に上がっていますので、新たな運用方法についても検討していくことができると考えています」(森山氏)

今後について日本トムソンでは、まだ移行していない基幹系のシステムについて、順次移行を進めていく予定です。

「米国は2024年、欧州は2025年、日本の会計システムは2026年を目途に移行を完了させる予定です。コベルコシステムには、これからも私たちの頼れるパートナーとして伴走し、プロジェクトを支援してくれることを期待しています」(相宮氏)

お客様とともに
左からコベルコシステム 木内(担当営業)、日本トムソン 相宮氏、長谷川氏、森山氏、コベルコシステム 青柳(PM)

※この記事は2022年12月時点の内容です。

導入された企業様

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日本トムソンの代表製品

日本トムソン株式会社

創業:1950年2月
所在地:東京都港区高輪2-19-19
URL:http://www.ikont.co.jp/
資本金:95億3,317万390円
売上高:622億8,400万円(2022年3月期)
従業員数:2,673名(グループ合計:2022年9月30日現在)

〈事業内容〉
針状ころ軸受(ニードルベアリング)等、直動案内機器(直動シリーズ、メカトロシリーズ)、諸機械部品。

〈会社概要〉
1950年に設立された部品メーカー。各種機械の重要要素であるベアリング(軸受)および関連機器などの製造・販売を行っている。国内で初めてニードルベアリングの自社開発に成功した高度な技術力と、ニーズを丁寧にくみ取る顧客対応の細やかさを強みとしており、その製品は社会のあらゆる産業で幅広く利用されている。ブランド名のIKOには、革新的で(Innovation)、高度な技術に立脚し(Know-how)、創造性に富む(Originality)という意味が込められており、「社会に貢献する技術開発型企業」という経営理念のもと、多様化するニーズに応えた高品質の製品をグローバルに提供している。

導入したソリューション&サービス

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