社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2021年02月01日

自社の価値を問う 守るべきものと変えるべきもの
~新中期経営計画策定にあたって~

cello

1月20日に米国はバイデン新大統領に政権移行しました。いきなり15件もの大統領令に署名しましたが、果たして彼は米国の分断を融合させ、コロナ対策も併せて再び世界のリーダーとして尊敬される国に戻すことができるのでしょうか。そして、日本は緊急事態宣言が2月7日で解除できるのか、このコラム執筆時点では判断できない状況ですが、何とか収束して今月末のワクチン接種開始、そして東京五輪の開催決定を確実なものにしてもらいたいものですね。

さて当社では今年4月に発表する新中期3ヶ年経営計画の策定が大詰めにきています。2017年に定めた長期経営ビジョン「Be a Trusted Partner」の第1ステージとして、お客様からの信頼獲得の足固めを目標とした3ヶ年計画「Get Trust! 2020」は昨年終了しましたが、事業業績はもとより顧客満足度スコアや従業員満足度スコアが向上しており、社員の意識や行動変革に一定の成果が出ました。それを踏まえた第2ステージとしての新中期なので、足固めした実績をテコにお客様との新たな信頼関係(パートナーシップ)の確立を目標としています。お客様との信頼関係強化という長期ビジョンに沿った中期計画なので大きな方向は変わらないのですが、それでも3年に一度の検討なので経営理念、長期経営ビジョンといった上位概念から展開して新中期のコンセプトや戦略を検討しました。一方で、DXやパンデミックなど経営環境の変化対応も戦略に織り込む必要があります。

さてその中期検討もあるので、先月の当コラムでは企業が存在する目的をテーマとしましたが、今月は企業の価値について取り上げたいと思います。自社の価値は使命と言う事もできますが、それは一体何を指すのでしょうか。30年ほど前になりますが、IBMコンサルタントの先輩からは「資生堂なら美、富士フィルムは記憶、そしてIBMは解決策の提供が使命と言える」と教えてもらいました。もっとも今の富士フィルムはデジタル革命を経て「Value from Innovation」がコーポレートスローガンとなっています。企業変革でイメージング、ヘルスケア、ドキュメントと事業領域が複数に変化したからでしょうが、こういった複合企業ではもはや一概に使命を言えなくなっているのかもしれません。とはいえ強い企業は使命という上位価値とそれを具現化する価値・能力を有しています。それに関して言えば、IBMが1992年に初めて赤字に陥り、当時ナビスコ会長兼CEOのルイス・ガースナー氏が外部からの初めてのCEOとして登場し、全世界の社員にメッセージした言葉を今も鮮明に覚えています。「IBMは他社にはない価値を3つ持っている。それは素晴らしいお客様、優秀な社員、そして卓越した技術である。これらがある限り必ずIBMは復活する。」当時はダウンサイジングとオープン化でIBMの独占が崩れ、ワークステーションでは競合に敗れる事も多く、営業の最前線にいた私も先行きに懸念を持っていましたが、この言葉で勇気をもらいました。堀場製作所の創業者である堀場雅夫氏は「企業の真の価値はお金だけで買えないものをどれだけ持っているかで決まる」と述べていますが、IBMの価値もそういう事だと思います。これらは一朝一夕にできるものではないが故に価値があるのでしょう。またそれが故にその企業のDNAとして守るべき企業文化なのだと思います。そのIBMは昨年末に新しいCEOのアービンド・クリシュナ氏が会社分割の発表をしました。前述の価値を守れるかどうかが成功の鍵になると個人的には思っています。

企業文化といえば、昨年末に経産省は我が国企業がDXを加速するため、企業のとるべきアクションと政府の対応策の検討を行い、『DXレポート2(中間取りまとめ)』(※1)として中間報告書を公表しました。そこでのメッセージは日本企業の大半はDX化が進んでおらず先進企業との格差が開いている。コロナ禍でデジタル化は加速したが単に道具を導入するだけでは意味がなく、DX推進の本質はレガシー企業文化からの脱却にあるという認識をリーダーが持つ事とあります。興味深いのはレガシー企業文化からの脱却というキーワードです。企業文化は守るべきものと思っていましたが、レガシー=時代遅れな慣習とかビジネスプロセスやルールは変化させるべきと明言しています。個人的にはこれらは企業文化ではなく慣習だと思うのですが、これを是とするなら企業文化にも守るべきものと変えるべきものがあるという事ですね。1年前の本コラム(※2)で阪神淡路大震災から25年たった神戸の姿を不易流行という言葉でお伝えしましたが、企業も永く生き残る為には不易流行が必要なのでしょう。

では当社の守るべき価値とは何なのでしょうか。顧客基盤、社員、CSを標榜する企業文化、ソリューションアセット等々が挙げられますが、これは社員一人一人に考えてもらいたいと思っています。

※1:デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004.html

※2:2020年02月01日不易流行 ~神戸という街の変遷~
https://www.kobelcosys.co.jp/column/president/20200201/

2021年2月

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