社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2020年11月01日

人生100年時代に必要なもの
~「超」独学による生涯学習のすゝめ~

Coffee

11月は何といっても3日に実施される米国の大統領選挙の行方に全世界の注目が集まるでしょうね。このコラムを起草している時点の下馬評ではバイデン氏が優勢ですが、トランプ大統領は4年前も劣勢からの逆転勝利をもぎ取った実績があるのでフタを開けるまで結果はわからない状況です。さてどうなることやら。いずれにしてもまずは景気回復とコロナ禍の早期収束に注力してもらいたいもので、選挙後にトランプの乱が起こらないことを祈るばかりです。

ところで今回の大統領選の候補者はバイデン氏が77歳、トランプ氏が74歳と高齢で、これから4年の任期を思うと心身ともに全う出来るのか他国の事ながら心配になってきます。これまでの記録は1984年に73歳で再選を果たしたレーガン大統領で、彼は4年の任期を全うしました。晩年はアルツハイマー病と診断されましたが、任期中は最後まで高い支持率を保持していたようです。この前例が高齢候補の容認に繋がっているのは否めません。もっとも3大成人病と言われる癌、脳梗塞、心筋梗塞を60歳前後までに罹患しなかった人の平均寿命は日本では90歳を超えると言われていますので、健康な人なら70代はまだまだ現役で通用するのでしょうね。

日本でも80代でも現役で活躍されているカリスマ経営者がキヤノンの御手洗会長兼社長、ダイキンの井上会長、富士フィルムの古森会長等、何人もおられます。スズキの鈴木修会長は御年90歳、信越化学の金川会長に至ってはなんと94歳です。日本の政治家では菅首相が71歳、麻生副総理は80歳、二階自民党幹事長は81歳ですが新政権の中核に居ます。人生100年時代と言われますが、知力と体力そして意欲がある人は100歳まで社会で活躍できる、という事例が政財界のトップに存在している訳です。(※1)という事は60歳の成人病の崖を超えた人は、政財界のトップでなくとも人生100年時代を絵空事ではなく現実として受け止めて、その後の人生を過ごさねばなりません。そして、どうせなら幸せで充実した人生にしたいものです。

という事で今回は人生100年時代の過ごし方について考えてみます。日本は長寿国の一つになっていますが、それは平均寿命であり健康寿命ではありません。健康寿命とは、日常生活を制限されることなく健康的に生活を送ることのできる期間であり、即ち充実した人生を送れる寿命という事です。厚生労働省が取りまとめた2019年の日本人の平均寿命は、男性が81.41歳、女性が87.45歳ですが、WHOが算出した日本人の健康寿命は78.7歳だそうです。(※2)この数値はあくまでも平均なので、60歳成人病の崖を超えた人の健康寿命も実際はもっと高いものになりますが、充実した人生の為に第一に心がける事は健康に留意して健康寿命を延ばす努力をする事です。(これについては多様な方法があるのでここでの言及は割愛します。)その上で自身の健康寿命が100年となる事を想定して、どの様な事が必要になるかですが、ある講演で人生を25年毎4つ(Quarter)に区切って俯瞰する面白い見方を聴講しました。最初の25年(1Q)は養ってもらう、2Qは人の為に働く、3Qは自分の為に働く、4Qは後進へ繋ぐ、というものだったかと記憶しています。面白いと思ったのは3Qで、子育てなどから解放され、自分自身の老後の生活を充実させるために働くという見方です。先のWHOの調査では日本の平均引退年齢は70.2歳ということですから、もうすぐ70歳ではなく75歳まで働くことが普通になりそうですね。そして4Qへと繋がるわけですが、充実した後半の人生に必要なものが生涯学習ではないかと思います。生涯教育を受けて発展した概念にリカレント教育なるものがあり、「職業能力向上となり得るより高度な知識や技術、生活上の教養や豊かさのために必要な教育を生涯に渡って繰り返し学習すること」を意味します。これこそ正に人生100年の3Q、4Qを充実させるものでしょう。「六十の手習い」という言葉も有りますが、意識が高く健康寿命の長い人は昔から何らかの形で学習し、社会に関わっていました。

とはいえ働きながらの手習いは言うは易し、行うは難しでなかなかはじめの一歩を踏み出せないものです。私自身も英語力の必要性を30代から認識していましたが、忙しく時間が取れないという言い訳の中で十分な勉強ができず、結果として成果もなく反省しきりです。ところが現在はコロナ禍で在宅勤務できる人が増えているので、通勤時間などの浮いた時間を有効活用すれば学習できる機会は格段に多くなりました。加えてネット社会で教材も充実しており、英語以外にも大学の社会人講座や著名人によるオンライン講座などがPCやスマホで聴講できるので、空いた時間に好きなコンテンツを学習できます。つまりオンラインで独学できる環境が格段に向上している今こそ、生涯学習の第一歩を踏み出すチャンスである事を日本の社会人は認識する必要があるということです。「超」整理法で有名な野口悠紀雄氏の講演を最近拝聴しましたが、「オンライン独学の環境は飛躍的に向上し、その対象は多岐に渡る。社会人は現在の立ち位置と目指す目的が人によって大きく違う。故に目的を明確にしてからの独学を薦める。共通項はコミュニケーション能力の向上であり、特に英語、ITリテラシー、文章の書き方、読書を挙げておく。」と彼は述べています。(※3)デジタル社会は距離の壁を打ち破り10Kmも10,000Kmも一緒です。グローバル化を目指す日本企業はWeb会議で同僚のベトナム人やタイ人と会話するのに、日本語ではなく英語で会話する事がグローバル化に取り残されない為の第一歩でしょう。若い人には自戒も込めて今から英語力を磨くことを強くお薦めします。人生の3Qに差し掛かった方々には野口氏の「超」独学をお薦めします。私自身も英語以外に一個人として人生の後半である3Q4Qを充実させるために、まずは第一歩を踏み出したいと思います。

※1:強いトップが長く君臨すると、トップの意向を忖度した人事や意思決定がなされる弊害もあり稀にクーデターも起こります。しかしながら本文の例はことごとく業績の良い優良企業であり続けています。

※2:ニッセイ基礎研究所
『どの国よりも健康でありたい日本~引退年齢と健康寿命の国際比較~』図表6より
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63053?site=nli

※3:野口 悠紀雄(のぐち ゆきお、1940年12月20日 - )
日本の元大蔵官僚、経済学者。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授、著書『「超」整理法』で有名。本コラムのコメントは下記講演よりの抜粋
『「超」独学法ネクストノーマルで成果を上げる新しい働き方 ~今、求められる第一歩とは~』

2020年11月

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