社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2020年09月01日

慣れてきた頃が一番危ない
~慣れ、だれ、崩れになっていないか~

ススキ

9月になりましたがまだまだ暑くマスクがつらいですね。この原稿を書く数日前にGo Toトラベルキャンペーンを活用して徳島県の祖谷温泉に夫婦で行ってきました。兵庫県からの県をまたぐ移動でしたので迷惑がられないか懸念していましたが、旅館だけでなく立ち寄る先々で観光客への歓迎ムードでした。祖谷に旅館は4軒あり金曜でしたがすべて満室で、キャンペーンの効果は出ていると思います。35%Offは結構な割安感を感じ、新コロナ対策もしっかりしていて安心でき、かつとても気持ちの良いおもてなしを受けたので、また行きたいと思わせてくれました。ちなみに私達が泊ったのは祖谷美人という旅館ですが、料理も美味しくとてもコスパが良くおすすめです。このキャンペーンは色々な意見があると思いますが、観光業が活性化し、旅行者も普段の自粛ムードから解放されるので、個人的には推進派です。イベントの五千人制限も9月末を待たずに緩和が早まる可能性が出てきました。新コロナは第2波のピークが過ぎたとの見方もあるようですが、また緩めると次の波が来そうで予断は許せません。とはいえ、この半年の経験を活かして社会も個人も適切に対策を取り、徐々に経済緩和を進めて新たな日常を過ごしたいものですね。

振り返れば2月くらいから新コロナが話題になり、3月初めには自粛ムード、3月末に志村けんさんの訃報で一気に緊張感が全国に広がり、4月に緊急事態宣言が出され、今に至るこの半年で日本国民は百人百様の受け止め方で対策を取ってきました。カラオケが好きな私ですが、半年以上マイクを持たないのは成人してから初めてです。自身を守るため、それ以上に他の人に感染させないためにということで、マスク、手洗い、3密回避と自粛を半年も続けると、ストレスがある一方でそれなりに慣れてくるものですね。今月はこの「慣れる」と言う事について取り上げます。

「慣れる」、は別の言い方をすれば学習、経験を通じて適応すると言う事でもあります。これは人間の持つ能力の一つであり、身を守り生き残る為の競争力を高める本能なのでしょう。新しい環境に慣れる、変化に慣れる、ストレスに慣れるなどがそうですね。慣れる事によって要領よく物事が運べるようになり、生産性が向上し、競争力が高まる事でホモサピエンスは史上最強の生物となったと言えるかもしれません。一方で嫌なことやストレスを忘れる事も精神的な安全を図るという意味で慣れる事の大切な能力です。でもそれ故になのか、戦争や地震等の天災の様に忘れてはいけない事も記憶が風化し備えが疎かになっていくきらいもあります。その点AIは違います。学習し、経験を重ねて洞察力が増すという慣れの長所を有すると共に、忘れてはいけないことは決して忘れないという人間の欠陥を補完する能力があります。AIはAugmented(増強) IntelligenceであるとIBMの研究所がメッセージしていましたが、まさにそうだと思います。2020年03月01日の本コラムにて似たようなお話をしていますので参考までにLinkを記します。

※2020年03月01日 社長通信 備えにAI加われば憂いなし
https://www.kobelcosys.co.jp/column/president/20200301/

慣れる事の大事さは言うまでもないですが、慣れる事で緊張感が薄れ、当たり前の事がキチンと行えないとかポカミスといったような悪い事象も発生します。ヒューマンエラーは慣れた頃が一番危ない、と言われています。新しい仕事や重要な案件に関わったら当初は緊張感をもって丁寧に仕事を進めるのですが、徐々に慣れてくると緊張が薄れ油断が生じ、遂にはミスを犯してしまうのですね。そのヒューマンエラーへの対策に秀でた企業の興味深い取り組みをみてみると、劇団四季ではこの現象を慣れ、だれ、崩れと言って忌み嫌い、そうなった団員は去れ!と戒めています。そういった緊張感を全員に浸透させることで毎日同じ演劇を高い品質でロングランする事が出来ているのでしょう。当社のようなITサービス業界に従事する社員は日々お客様と接する機会がありますが、ともすればこの慣れ、だれ、崩れが起こりうる環境にあります。お客様との関係に慣れ、仕事の中身に慣れ、作業や成果の品質の高低のレベルにも慣れてくると甘えや油断、ごまかしが生じる隙が出てきます。これが品質不良や不正の起こる源だと言えます。トヨタに代表される強い企業は、これらに起因するヒューマンエラーが発生しないようにポカヨケやカイゼンの仕組みを追求し、業務プロセスにおいても不良、不正が発生しない様に徹底しています。日本企業の品質が高いと言われるのはこのような文化が浸透しているからなのですが、これも油断すると慣れ、だれ、崩れが生じ、新興国に凌駕されないとも限りません。そうならない為にもAIなどデジタルソリューションを駆使して製造業をはじめ日本の企業の再興を「慣れ」の視点で見直してみると良いかもしれません。当社の存在価値は高品質、高付加価値のデジタルソリューションをお客様に提供し続ける事であると認識しています。まずは自社において高品質を持続的に維持・向上できる仕組みになっているか「慣れ」の視点で見直してみたいと思います。

2020年9月

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