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コベルコシステムニュース

代表取締役社長 奥田 兼三 社長メッセージ

夢を力に

銀杏のはっぱ多くのドラマを残して北京オリンピック/パラリンピックが終わりました。勝利への執念、勇気ある挑戦、戦う気持ちの高揚、心身ともに限界まで追い込んだひたむきな選手を見ていると、夢や感動は計り知れない力を生み出すエネルギーになるのだと改めて感じた一ヶ月でした。

今から60年程遡りますが、戦後間もない混乱の中、「フジヤマのとびうお」と言われた古橋広之進選手が水泳の自由形で世界新を出しました。敗戦国の日本は国際水泳連盟への加入を認められず、1948年(昭和23年)のロンドンオリンピックに参加することができませんでしたが、1949年に加盟が認められたその年に世界新を記録しました。この快挙は日本中に大きな感動を与え、誇りを失っていた人々に夢を与え、勇気を奮い立たせたようです。

1948年に本田技研工業を創業した本田宗一郎氏もその一人だったそうです。1954年(昭和29年)3月20日 英国マン島TTレース(Tourist・Trophy・Race)への参加宣言がまさにその夢の第一歩でした。このグランプリ・レースは、1907年(明治40年)に第一回が開催され、世界中から何十万人の人々が訪れるイベントで、「マン島を制するバイクは世界最高のマシン」と賞される、まさにモーターサイクルのオリンピックです。本田氏は「私の履歴書」の中で、「少しセンチメンタルかもしれないが、敗戦直後の日本人の心にほのぼのとした希望を与えてくれた古橋広之進選手の水泳における大活躍を思い出した」「汽車の窓ガラスを破って乗り降りしたようなあのすさんだ時代に、彼の世界一の記録はどれほど国民を慰め勇気づけたかしれない。私には古橋選手のような体力はないが技術というものを持っている。」と語っておられます。

そして、「技術、つまり頭脳による勝利がどんなに日本人に大きな希望を与えることか。ことに若い層に与える影響は大なるものがあろう。しかもダイナミックなグランプリ・レースだから、ここで優勝すれば輸出が有利になるのもさることながら、日本人としてのプライドを持たせることができると考えた」と記されています。

当時、世界のオートバイ市場はドイツ、イタリアの競争車がホンダと同じ気筒容量で三倍もの馬力を出していた頃ですから日本のバイクがTTレースに参加するなぞとは途方もない夢です。本田氏は宣言から三ヶ月後に初めてマン島のレースを視察し、先進国の技術を間近に見て、えらいことを宣言してしまったと驚き悲観したそうです。 ここで、本田氏がCTO(※1)ならCEO(※2)として経営にたずさわった副社長の藤沢武夫氏が、この夢の実現のために集団思考でやっていける体制を作ります。一人ひとりが誇りと勇気と信頼をもって意見を具申し、自分の仕事に限界を決めずに向かう組織づくりをしました。「経営の経の字はタテ糸だ。布を織るときタテ糸は動かずにずっと通っている。営の字のほうはさしずめヨコ糸でしょう。タテ糸がまっすぐ通っていて、はじめてヨコ糸は自由自在に動く。一本の太い筋が通っていて、しかも状況に応じて自在に動ける」。

藤沢氏の経営理念は社員の可能性を信頼し、人間尊重という「タテ糸」を核にして、「TTレースに勝利する」という夢の実現に全社員が一丸となって行きます。

ホンダイズムはまさにこのTTレース参加宣言を原点にして生まれ、企業文化として現在まで受け継がれていると言われています。そして見事に、この宣言から5年後の1959年(昭和34年)レース出場が実現し、1961年(昭和36年)には1位から5位までを独占して世界中を驚かせることになったのです。

戦後60余年、日本経済は成長し、企業が大きくなり、バブルの時代を経験し原点が見えにくくなっています。一人ひとりが夢や感動のある仕事をすることは、決して簡単なことではありませんが極めて重要なことと思います。当社は“お客様と「夢」を共有し、確かな知識と卓越した技術によるITソリューション/サービスを通じて、お客様の発展とチャレンジに貢献し続けます”という経営ビジョンを掲げています。お客様の目指されている「夢」の実現に向けて、我々が貢献することで、お客様に喜んでいただけることは大きな感動であり、次のステップへのエネルギーとなります。どんなに小さなことでも、先例のないものにチャレンジし、困難を乗り越えていく勇気は大きな自信となります。

現場の経験で培ってきた優れた品質、高度な技術、それを支える確かな業務知識やIT専門知識を積み重ねることを基盤に、組織を協働行為の体系と捉えて自在に動ける会社でありたいと考えています。一人ひとりが「夢を力に」して無限の能力を発揮できるよう知恵を集結し、太くまっすぐな「タテ糸」を核にして、横の連携が良くスムーズに業務や情報が流れる会社を目指していきます。お客様から信頼される真のパートナーに向けて。

(※1)CTO…Chief Technorlogy Officer、最高技術責任者
(※2)CEO…Chief Executive Officer、最高経営責任者

2008年10月

 

参考文献:
本田宗一郎「夢を力に」 日経ビジネス人文庫
新原浩朗「日本の優秀企業研究」 日経ビジネス人文庫
藤沢武夫「経営に終わりはない」 文春文庫

 

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