「自律的成長への加速」をめざして -チンギス・ハンと小倉昌男氏を範として-
今年の当社のスローガンは「自律的成長への加速」です。
そしてそのためには「自律する人材」「成長のメカニズム」「規律ある組織」の三本柱が不可欠です。
この自律的成長を成し遂げた事例として、現在日経新聞に連載中の堺屋太一氏の小説「世界を創った男チンギス・ハン」のモンゴル帝国と、宅急便で有名な小倉昌男氏のヤマト運輸をとり上げ、この三本柱がどう構築され、うまく機能し、自律的成長を組織として遂げたかを探り、当社の「自律的成長への加速」の範にしたいと思います。
日経の連載小説では、ちょうど、チンギス・ハンが強い組織を如何に作り、連戦連勝していくかのくだりにさしかかっています。
チンギス・ハンはたった40年間でモンゴル草原のみならずカスピ海東岸に至る迄の東西五千キロ、南北千五百キロの地域を支配下におさめ1206年大モンゴル帝国を築き、人類史上空前の世界国家を創り上げました。800年も前にこんなにも短期間に、世界征服が可能となったのは何故でしょうか。堺屋太一氏は次のような理由を挙げておられます。
チンギス・ハンは「地に境界なく、人に差別ない」世の中にしようという理念を実現するため次の三つのコンセプトを考え実行しました。
(1)無限無差別の取り込み主義 (2)絶対王政 (3)経済重視です。
(1)は降伏した者や帰属した部族には寛大で、実力や能力のあるものを登用し、また彼らのすぐれた提案はへだてなく取り込みました。結果として人種や宗教、文化の異なる種々の多民族の中から多くの優秀な自律した人材が輩出しました。
(2)の絶対王政では、血縁による部・氏族社会だったモンゴル族を、命令必行、約束厳守の軍律を徹底し、また法律や行政機能を整備し、絶対王政の法治帝国へと大変革させました。一方で広大な領域はすべてその土地の住民の自治と自由に任す、オープンな体制にしました。つまり、オープンでかつ規律ある組織が形成されたことになります。
(3)の経済重視は、通商の拡大と自由な交易をめざし、経済をもっとも重視したことを指します。 そしてそのために、全く新しく不換紙幣を基軸とする通貨制度を導入したり、帝国内に通信ネットワークを張り巡らしたりしました。即ち成長のメカニズムを創り上げ、システムとして機能させました。
上記のようにチンギス・ハンは「自律する人材」「規律ある組織」「成長のメカニズム」の三本柱を見事に駆使し、あの世界国家モンゴル帝国を短期間に創り上げました。
次にクロネコ・ヤマトの小倉昌男氏が、如何にして全国ネット、全国翌日配達の宅急便を創り上げたか検討してみましょう。小倉昌男氏の経営は次の三つの理念に集約できます。
(1)「全員経営体制」によるヒューマニティ経営の実践
(2)システム(運輸システム、情報システム、作業システム)の重視による全国均一サービスの実現
(3)「サービス優先、利益は後」のダントツサービスの実現
そしてこの理念は今日、10万人以上のセールスドライバー(運転手の呼称を改めた)の自主的な活動によって支えられています。
(1)小グループ制や営業所間のベンチマークによる自己向上システム等、旧来のピラミッド型組織を崩し社員全員で情報を共有して、社員のやる気を引き出す「全員経営」の下、自律する人材の育成に努めました。
(2)宅急便のスタート時点からの全国翌日配達ネットワークの形成というコンセプトを実現するため、運輸省と壮烈な闘いを繰り返し、全国人口比99.9%、面積比99.5%の全国カバーを達成し、初年度170万個の取り扱いが現在12億個にまで伸ばすことができました。成長のメカニズムであるシステム(運輸システム、情報システム、作業システム)の重視の賜物といえます。
(3)セールスドライバーの自主性を重んじる、オープンでヒューマンな体制の一方、「サービス優先、利益は後」とするお客様第一の倫理規定や作業規定を遵守することを全社員に求める、規律ある組織の運営でも他社を圧倒しています。
今や私達の生活になくてはならぬ存在となった宅急便の成長の秘密も「自律する人材」「成長のメカニズム」「規律ある組織」による自律的成長への加速に帰着します。
モンゴル帝国やヤマト運輸と規模は比べるべくもありませんが、この二つの事例を範として当社に於ける三本柱を考えてみましょう。
先ず「自律する人材」は社員一人一人が主体的に独自性をもってビジネスを推進することを意味しています。その一つとしては当社が昨年より実施している、「キャリア・コミュニケーション・プログラム」の実施があります。自分の10年後、5年後、3年後、そして今年のキャリア目標を個別キャリア計画として明確にし、上長との対話を通じてその実現を社員と会社が協同して実現する仕組みです。そして更に「スペシャリストやプロフェッショナル認定制度」、「アプリケーション・マスター制度」、「コベルコシステム経営塾」等を通じて社員一人一人のスキルと人間力向上に社員と会社が一体となって推進していくことを考えています。これによりヤマト運輸やモンゴル帝国のように当社においても優秀な自律する人材が次々と輩出していくことを願っています。
「成長のメカニズム」では成長し続ける会社としてのメカニズムの確立を目指し、当社の事業モデルである「神戸製鋼所様での高度なシステムの開発・運用をコアケイパビリティにしたバリューチェーン・スパイラルモデル」の徹底と、そこから生み出されたアセットベースビジネスの一層の推進を行います。そして更に PLMやシステム・アウトソーシングを始めとした種々の新規事業へのチャレンジを推進していきます。
また、ヤマト運輸のシステム重視の理念を範にして、更なる成長のメカニズムの検討も行うつもりです。そして当社が業界随一の独自性をもった強力なソリューションサービス会社、一流のSIerになれるよう、全員で努力していきたいと考えています。
「規律ある組織」では、決めたことはやりきる自由闊達な規律ある組織への脱皮を考えています。
本年、KQMS(コベルコシステム品質マネジメントシステム)を全社的に導入しますが、これは全社的なQCD(品質・コスト・納期の管理)のレベルアップにより、お客様に一層信頼していただける会社になるための新しい仕組みです。全部門、全社員の徹底した取り組みを推進したいと考えています。また、 2009年3月期決算からの適用になる日本版SOX法への前向きの対応を通じて会社のリスク対応、コンプライアンス対応等内部統制の強化による企業価値の向上に努めていきたいと考えています。そしてモンゴル帝国のように権限委譲を押しすすめつつ、規律ある自由闊達な組織風土の醸成に努めたいと考えています。
これらの三本柱の着実な実行により、お客様と夢を共有し、お客様の成功と発展に貢献する企業の実現にむけ、Good to GREATな企業へのチャレンジを全社員力を合わせて努力していきたいと考えています。
2007年2月
| 参考図書 | 1:堺屋太一が解く チンギス・ハンの世界 講談社 |
| 2:小倉昌男 経営学 日経BP社 |








