社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2017年12月01日

モノからコトへの破壊的イノベーションとデザイン思考
~デジタル革命の時代だからこそ必要なこと~

IDEAS

いよいよ12月に入り2017年のカウントダウンが始まりました。弊社は12月末決算で、年度締めの追い込みと次年度予算や組織変更などの計画立案が重なりますので、文字通り師走の様相を呈しています 。日本経済全体としては株価も企業業績も回復から上昇基調にあり、翌年もより一層の上昇を期待したいところです。

さて先日、シリコンバレーを視察してきました。Uberの様なユニコーン企業(※)を目指すスタートアップ企業が破壊的イノベーションを考案し、それにベンチャーキャピタルを通じて、投資ファンドやM&Aを模索する大手企業と結びつけるエコシステムの活性度には目を見張るものがありました。
※ 企業としての評価額が10億ドル以上かつ非上場のベンチャー企業

特に興味深い先進テクノロジーとしてはAIのなかでも映像認識Data(衛星からの地表画像)をInformation(人の数や車の数をカウント)に仕立て、Machine LearningのSolutionを駆使してそれを分析(工場の従業員や生産台数の把握、分析)して洞察(Insight、この工場の生産台数は増加傾向)する、という一連のData Science Serviceが興味深いものでした。他にもVR/AR(仮想現実/拡張現実)もどんどん進化しています。

でも、一番私の印象に残ったのは、エコシステムに参加している企業の共通言語、手法としての『デザイン思考』でした。このデザイン思考というのはSAP社が強く推進している問題解決の手法です。現地でもSAP社の話を聞いてきたのですが、他にもGoogleやAppleなども含めたシリコンバレーの各社で採用されています。その手法の解説は割愛しますが、ここで考えさせられたのは「何故こんなにも多くの企業が共通言語としてデザイン思考の思考モデルを活用するのか」ということでした。

思うに、これまでは良いモノを市場に供給すれば売れた時代であり、それはSustainable Innovation(持続的イノベーション)=「カイゼンの手法」で良いモノが作れたのでしょう。たとえばクルマの場合は、燃費、パワー、クリーン、ナビゲーションなどの機能を改善し、いいクルマを作れば良かったわけです。それがライドシェアサービスの出現により、クルマは所有する「モノ」から移動するサービスという「コト」へと市場のニーズが破壊的に変わってきたわけです。これをシリコンバレーではDisruptive Innovation(破壊的イノベーション)と呼んでいます。こういった「モノからコトへ」の変化を考える際に使う思考モデルが「デザイン思考」なのでしょう。

ターゲットであるお客様の人間的な行動特性、要求特性を注意深く観察し、その欲求の本質は何かを徹底的に考えることで解くべき問題を発見するアプローチですね。マーケティングの世界で古くから使われている格言に「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴である」というものがあります。デザイン思考はこれを突き詰めたものなのでしょう。この例をさらに突き詰めると「なぜ穴が欲しい」のか「本当は棚が欲しい」のか、「絵を掛けたい」のか、などを徹底的に考え抜き、絵画提供サービスを考案したり、穴を一つずつあけるサービスはビジネスになるか、などを検討したりするのでしょうね。 この格言は1969年に出版されたT・レビット博士の著書「マーケティング発想法」に出てくるそうですが、なんと今から約50年も前の話です。この時からプロダクトアウトではなくマーケットインの大切さは色あせていないという事です。しかし、一つ大きく違うのは、今はデジタル革命の時代だということです。それが故に、問題解決のSustainable Innovation(持続的イノベーション)ではなく、問題を発見してそれを先進技術サービスに変化させるDisruptive Innovation(破壊的イノベーション)が具体的なソリューションとしてビジネスになるのです。

デジタル革命時代の先進テクノロジーを踏まえた上で問題の本質を発見し、モノではなく、コトを提供するソリューションを実現する。これこそがデザイン思考が共通言語、手法としてシリコンバレーで定着する所以ではないでしょうか。
なかでも問題の発見が最大のキーポイントとなるわけですが、そのノウハウについてもいろんな成功事例をもとに手法化されつつあるようです。でもそうすると逆に問題の差別化ができなくなり、新たな問題発見手法のアイデアが必要となってくるかもしれないと感じました。

そこまで言うなら、「コベルコシステムはICTサービスでデザイン思考をどう活かすのか?」と問いたくなりますよね。それは、これからじっくり徹底的に考えます。

2017年12月

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