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2016年01月01日

ビジネスモデルを変える①
ビジネスモデルって何?

日本の製造業は、現在のビジネスモデルを見直し、新しいビジネスモデルを競う時代になってきています。そこで、これから何回か「参考となるビジネスモデル例」、「製造業のビジネスモデルのこれからの姿」などをテーマに取り上げていきたいと思います。

日本の製造業が直面する大きな問題の一つがイノベーションです。2014年11月の当コラムで2つのイノベーションの分類、「プロセス・イノベーション」と「プロダクト・イノベーション」を紹介しました(*1)。生産工程の効率化、高品質化を徹底して追求する「プロセス・イノベーション」は日本の製造業の強みの源泉でもありました。しかし、新興国が徐々に生産力をつけてきたため、優位性を保てなくなってきています。そこで、「プロダクト・イノベーション」によりお客様の潜在ニーズを掘り起こせるような製品を提供することが必要となるのですが、これもなかなかうまくいきません。製品そのものが、ますますコモディティ化、モジュール化し、日本の製造業が得意とするものづくりでの差別化が難しくなってきました。また、ものが溢れた昨今、お客様は製品の機能にはあまり価値を感じなくなっています。
*1イノベーションと ものコトづくり
https://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/347/


このように、プロセスやプロダクトを対象としたイノベーションを実現することが難しくなってきた日本の製造業は、儲けるための事業の仕組みであるビジネスモデルも対象とするイノベーションへの取り組みに迫られています。前々回のコラムでGE社のインダストリー・インターネットによるプラットフォーム型ビジネスモデルを取上げました(*2)が、このような新たなビジネスモデルを日本の製造業もどんどん構築していく必要があります。
*2 GE社に見るプラットフォーム型ビジネスモデル
https://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/384/


ビジネスモデルという言葉が今のように一般的に使われ始めたのは1990年代、ヤフーやアマゾンといったインターネットを利用したビジネス、いわゆるネットビジネスが盛んになった頃です。ビジネスモデルという言葉はネットビジネスという言葉とともに、投資家やベンチャーそしてメディアで盛んに使われました。同時に、インターネットやコンピュータを使った独創的なビジネス方法の特許である、「ビジネスモデル特許」という言葉もよく目にしました。

では最近はどうでしょうか? ここ3~4年の日経新聞を「ビジネスモデル」で記事検索したところ、毎年コンスタントに200~250の記事で使われていました。このようにビジネスモデルという言葉が現在もよく新聞記事に現れるのは、日本の企業がビジネスモデルに高い関心を持っていることを意味するのでしょう。

色々なところで使われている「ビジネスモデル」という言葉ですが、「そもそもビジネスモデルとは何か」を特に気にすることなく使っていることが多いようです。そこで改めて「ビジネスモデルとは何か」について概観してみましょう。

ビジネスモデルの定義については、元々これと決まったものはなかったようです。ここ数年ビジネスモデルに焦点を当てる重要性が認識されるとともに、その定義についても語られるようになってきました。いくつかのビジネスモデルの定義を見ると、経営学者やコンサルタントによりそれなりに違いはあるものの、ビジネスモデルの核心は「誰に、どんな価値を提供するか(バリュープロポジション)」にあり、これは事業戦略そのものです。さらに、ビジネスモデルは、「どう利益を獲得するか(収益、コスト)」が大切であり、その価値を「どのように実現するか(バリューチェーン、組織)」も含みます。ビジネスモデルを表すフレーム例として、ソーシャルメディアによるオンライン・コミュニティが共同で作成したビジネスモデル・キャンバス(下図参照)があります。このフレームは価値提案を真中においた9つの要素から構成され、右側は、「誰に、どんな価値を提供するか」、左は「どのように実現するか」、そして下が「どう利益を獲得するか」に対応し、ビジネスモデル全体を俯瞰するのに役立ちます。

ビジネスモデル・キャンバス
図.ビジネスモデル・キャンバス
ソース:「ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書」より編集加工


ビジネスモデル・イノベーションは、このビジネスモデルの構成内容や関係を大きく変えることになります。特に現ビジネスモデルでの成功体験を持つ経営層はそのビジネスモデルに固執する傾向があり、ビジネスモデルの見直しから目を背けがちです。しかし、どんなに優れたビジネスモデルも寿命があります。どの企業もこれまで培ってきた自社固有のビジネスモデルを持っているのですが、顧客ニーズの変化や規制緩和、競合構造の変化、株主からの圧力などをきっかけに、現行ビジネスモデルが急速に通じなくなっていくことがよくあります。GE社のように、たとえ業績はよくても、ビジネスモデルの衰退が始まる前に新たなビジネスモデルの構築に積極的に取り組んでいきたいものです。


次回はビジネスモデルの変革例を見てみましょう。


2016年1月

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