ものづくりコラム 設計、生産管理、原価管理などものづくりに関するトピックを毎月お届けします。

2014年08月01日

「コトづくり」のマーケティング・プロセス

前回紹介したマーケティング・プロセス(図1参照)は、企業がマーケティング力を磨いていく上で大変参考になります。

図1 マーケティング・プロセス

今回は、まずこのマーケティング・プロセス前半のステップを少し詳細にみてみましょう。

1. 市場調査
マーケティング・プロセスの最初の段階で間違った分析を行うと、後の全てのステップに影響を与えるため、特に重要なステップといえます。日常のビジネスでは、市場の変化に気付かず、市場の実態も断片的にしか見えていません。従って、市場調査のステップでは、お客様をとりまく環境や価値観の変化、お客様ニーズなどの押さえるべき切り口から網羅的に調査する必要があります。例えば5-ForcesやSTEEPといった実証済みのフレームワーク(図2参照)は市場調査を網羅的に行う上で役立ちます。

図2 フレームワーク

2.1 セグメント化
自社の商品を購入してもらえる可能性が最も高いお客様層を絞り込んでいくために、市場を共通のニーズや特性をもつ複数の市場にセグメント化(分類)していきます。セグメント化せず大きな市場のままを対象にした方が、大きな売上が上げられるのではないか、という疑問もあります。しかし、大きな市場の様々なニーズを狙った商品のコンセプトは非常に曖昧なものになります。このような中途半端な商品では顧客の心を捉えることはできず、市場セグメントのニーズに焦点を当てた競合商品に勝てないのは当然です。セグメント化の代表的な条件として、B to Bでは業種や企業規模、地域などが、また、B to Cでは性別や年代、職業や嗜好などがあげられます。単に市場を細分化するのではなく、自社にとって意味のある条件を選ぶことが、結果として良いターゲティングにつながります。

2.2 ターゲティング
ターゲティングでは自社が最も力を発揮でき、競争を優位に戦えるセグメントを選定します。各セグメントの規模や成長、競合度、そして自社の強みや競争力から、自社がどれくらいの収益をあげることができるのかを見極めていく必要があります。市場として魅力的なセグメントには、強力な競合企業が既に存在するか、新たな競合企業がすぐに参入してきます。自社の強みとマッチしないセグメントでは継続的な収益は見込めません。市場規模が小さかったり、今後市場の成長が見込めないようなセグメントも、敢えて参入する意味はありません。

2.3 ポジショニング
ターゲット市場において競合他社の商品に対する独自性や差別性を発揮し、優位にビジネスを展開していくのがポジショニングです。競合企業の戦略を分析し、差別化でき、自社の強みを活かせる商品価値を定義します。他社と競合しない自社独自のポジショニングを行えれば、ビジネス成功の確率を高めることができます。

このようにマーケティング・プロセスを実践することにより、メーカー論理の「プロダクトアウト」から、市場(お客様)主導の「マーケットイン」のものづくりにシフトすることができます。しかし、今の時代、お客様が欲しいと思っているものを探して作るだけの「マーケットイン」では不十分です。お客様が自分で言い表せない潜在的ニーズやお客様自身が気づいていない課題に対し、「あなたはこういうものが欲しいのでは」、「こんな課題解決方法がありますよ」とメーカー主導で提案していく「コトづくり」が求められています。

このケースの市場調査ステップでは、まだ存在しない市場の調査をすることになります。顕在化していないニーズを探り当てるために、自社で潜在ニーズ仮説を設定し、独自の調査で検証していきます。また、セグメント化のステップでは、既成概念にとらわれない発想で有望なセグメントを見出し、自社の強みを活かせるセグメントにターゲッティングしていく必要があります。これからは、このような「コトづくり」のマーケティング・プロセスの実践が求められています。

次回はマーケティング・プロセス後半のステップについてお話します。


2014年8月

ITの可能性が満載のメルマガを、お客様への想いと共にお届けします!

Kobelco Systems Letter を購読