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2013年07月01日

ソリューションでコトづくり
BtoBの場合

前回、「メーカーが消費者に商品を提供するB to Cの場合、コトづくり視点の商品コンセプトが商品の付加価値創りの根幹になる」と話しました。今回は、サプライヤーが材料や部品、工作機械、設備などの製品をメーカーに提供するB to Bのケースを考えてみます。

メーカーはサプライヤーから製品を買うとき、どのように選択するのでしょうか? 例えば自社の商品に直接使用する材料や部品の場合、メーカーは自社の商品仕様や品質を満たすことが必須条件となります。生産用の機械や道具を購入するのであれば、自社の製造工程に適合することが選択基準となります。特にメーカーの購買担当者は、コストパフォーマンスも重視する傾向があります。

このためサプライヤーとしては、まず性能や品質、機能そしてコストパフォーマンスに優れた製品、つまり競合他社より少しでも機能的価値の高い製品を提供しなければなりません。そこで業界トップのサプライヤーはものづくりのノウハウを競合他社に知られないよう、研究、開発、製造をすべて社内で行い、自社工場の製造装置も自社で作るところが多く見受けられます。しかし、一方では競合他社の追随スピードが速くなっているのも事実です。B to Cと同様、B to Bでも提供する製品の機能や性能からもたらされる機能的価値だけでは、お客様であるメーカーに高い価値を提供し続けることは難しくなってきています。ものづくり力だけに頼った戦略では、やがて価格競争に陥ってしまうリスクを抱えているのです。

そこでサプライヤーは、単にメーカーの購買担当者に求められる製品を提供するのではなく、メーカーの商品や業務が抱える課題の解決策と一緒に提供していくことで、自社製品の競合優位性や付加価値を高めていく必要があります。例えば、繊維素材サプライヤーは衣料品メーカーだけに製品を提供するのではなく、商品の軽量化の課題を抱えるスポーツ用品メーカーや自動車メーカー、飛行機メーカーの用途に適した繊維素材を開発することで、自社製品の付加価値を高めています。また、ある製造機械サプライヤーはメーカーの製造現場に対して製造ラインの問題解決策も併せて提案することで、製造機械単体の販売に比べて遥かに高い対価を得ています。

このようにサプライヤーが自社製品と併せて課題解決策も提供することを「ソリューションの提供」といいます。メーカーの商品が抱える課題を解決するソリューションを提供したり、メーカーの開発・製造業務の課題を解決するソリューションを提供したりすることがコトづくりとなり、サプライヤーの製品の付加価値を高めていきます。メーカーの購買担当者は製品の機能的価値に加えて、自分が認識している問題を確実に解決するソリューションを提示されれば、その付加価値に見合った対価を払います。もしそれが、選定者も気づいていない潜在的な課題の解決まで踏み込んだソリューションであれば、購買担当者にとっての付加価値は一層高くなるでしょう。

このように付加価値の高いソリューションを提供するには、まずメーカーの商品や業務の課題を理解することが不可欠となります。さらに、メーカーの潜在的な課題の解決策まで提供できるためには、お客様以上にお客様のことを知っている必要があります。このためにはお客様の業界や業務を勉強し、精通することはもちろん、実際の提案活動やセミナーなどを通してのお客様の課題に関する声を収集し、実取引を通して現場の情報を得ることが大切になります。

B to B事業においては特に、お客様企業の現場知識や経験がコトづくりの必要条件となります。もしお客様と共同で戦略的な課題を解決していくことができれば、お客様の商品や業務をとことん理解できることにもなります。前々回のコラムで取り上げた東レ社は、ユニクロ社と共同で課題解決をしていくことでユニクロ社の商品や業務のやり方を理解し、付加価値の高い繊維素材を提供し続けることができた好例です。このようにメーカーに採用され、継続的に共同で課題解決していければ、サプライヤーとメーカーは東レ社とユニクロ社のように、互いにパートナーの関係に発展していきます。

B to BのコトづくりをB to Cとの違い(図1)という視点で見ると、B to Bの方がものづくりとコトづくりの相乗効果の割合が大きく、これこそ日本の部品メーカーの競争力が保たれている一因だと考えられます。

次回はバリューチェーンの観点からお話しします。

B to CとB to Bのコトづくり
 図1.B to CとB to Bのコトづくり

2013年7月

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