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2012年12月01日

退職給付会計基準の改正

平成24年5月に退職給付会計基準の改正が行われています。これに伴い、連結財務諸表規則において、従来の「退職給付引当金」は、その表示科目を「退職給付に係る負債」として改められることになっています。今回は、退職給付会計基準の改正とこれに伴う連結財務諸表規則の改正についてまとめていきたいと思います。

退職給付会計基準の改正

退職給付債務の積立不足である未認識数理計算上の差異や未認識過去勤務費用などは、これまで負債計上されませんでした。平成24年5月にコンバージェンスの一環として退職給付会計基準の改正が行われ、3月決算会社であれば平成26年3月期からは、未認識の数理計算上の差異や未認識の過去勤務費用などをその他の包括利益を通じて負債計上する会計処理に変更されることになっています。
なお、この変更は、市場関係者の合意形成が十分に図られていない状況を踏まえて個別財務諸表は対象としていません。
つまり、退職給付基準の改正により連結上のみ、従来は、簿外負債とされていた未認識数理計算上の差異、未認識過去勤務費用などについても即時に負債計上する(遅延認識されない)ことになったのです。

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連結財務諸表規則の改正

上記の会計基準の改正に伴って、平成24年9月に連結財務諸表規則の改正が行われ、3月決算会社であれば平成26年3月期からは、「退職給付引当金」は、「退職給付に係る負債」の表示科目で開示されることになりました。
この表示科目名称の変更は、連結財務諸表だけに行われており、個別財務諸表では、従来通り「退職給付引当金」の名称が用いられます。なお、連結財務諸表においては、これまでの「前払年金費用」が、「退職給付に係る資産」として表示されることになっているのでこの点にも注意が必要です。
このような表示科目の変更は、未認識数理計算上の差異や未認識の過去勤務費用などのその他の包括利益を通じて負債計上される部分については、従来の引当金の定義に合致しないために行われたものであると考えることができます。

<引当金の定義>

将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。
「企業会計原則注解18」
(下線は筆者が付記)
上記(下線部分)のように、引当金は、当期の費用又は損失として繰り入れられたものについて計上されるものですが、その他の包括利益を通じて計上された部分については、この要件を満たしていないと考えられます。
コンバージェンスによる会計基準の改正が、退職給付会計において「引当金」から「負債」への取り扱いの変更という事象を生じさせたといえるでしょう。

2012年12月

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