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2018年10月01日

デジタル化とものづくり①
~今さらですが、デジタル化って何?~

最近「デジタル化」という言葉が流行っています。新聞、雑誌やテレビでは、「デジタル化」に関する記事や番組をよく目にします。デジタル革命、デジタル・ビジネス、デジタル・トランスフォーメーションといったデジタルとつく用語も、IT企業やIT調査会社から盛んに発信されています。「デジタル化」は単なる世間の流行り言葉に留まっていません。企業内でも経営者が社内に向け、「我社もデジタル化に取り組むように!」と号令を出しています。また、「デジタル音痴の社長は会社を滅ぼす」と危機感を抱かされた経営者や、社外セミナーで先進企業の「デジタル化」成功事例の話を聞き「デジタル化」に期待したい経営者は、「我社のデジタル化はどうなっているか?」と社内のIT部門に問い詰めます。これに対し、IT部門は「デジタル化といわれても、IT活用とどう違うの?」と悩んでいる話も耳にします。

「デジタル化」について腹落ちしている人、「デジタル化」が当たり前のデジタル・ネイティブもいますが、実際のところ、「デジタル化って、そもそも何?」と戸惑っている人も結構多いと思います。中には、「デジタル化」は所詮IT業界にありがちなバズワードだと、冷めた見方をする人もいるでしょう。そこで、今回は改めて「デジタル化」とは何なのかを考察してみます。

まず、「デジタル化」を具体的にイメージし易いのは、AIやIoTの活用事例です。では、AIやIoTのテクノロジーを利用することが「デジタル化」なのでしょうか?AIはけっして新しいテクノロジーではありません。1980年頃には、既に第2次AIブームがあり、現在は第3次のAIブームです。今流行りの深層学習の技法も第2次AIブーム以前からありましたが、当時はあまり脚光を浴びていませんでした。IoTも同様です。振り返ってみれば、2000年頃には、家電量販店には、ネットにつながる「デジタル家電」が売り出されていました。どうやら、AIやIoTのテクノロジーを利用するだけでは、「デジタル化」とは言えないようです。

「デジタル化」はけっして目新しい言葉ではなく、何十年も前からごく一般的に使われてきました。例えば、カメラや腕時計、家電や複写機など我々の身近な製品が「デジタル化」されていました。製品の技術をアナログからデジタルに変えることで、画質や精度、品質が格段に向上し、製造コストの低減も可能となりました。2000年以降にインターネットが普及してくると、デジタル家電が現れ、遠隔からの操作や監視ができるようになりました。

では、従来の「デジタル化」と今後の「デジタル化」とは、本質的に何が異なるでしょう? まず一つ目の違いは、今後の「デジタル化」はこれまでの延長ではない、新たな価値を生み出すことです。製造業のサービス化などのように既存のビジネスを変革し、新たなビジネスを産み出していくことです。業務プロセスや仕事の仕方を大きく変えることで、新しい成果を出すことです。従来の「デジタル化」においては、AIは人の思考を真似るレベルや支援までが限度で、人が行う仕事を実際に代替できるレベルではありませんでした。従来のデジタル家電は、製品の性能や価格などで機能的価値を高めてきましたが、製品の新たな用途といった意味的価値の提供には至りませんでした。

二つ目の違いは、「デジタル化」実現のコストです。新たな価値を提供するためには、桁違いの高速計算や膨大なデータの高速通信、多数のセンサー、様々なソフトウエアの利用が必要となります。従来は、新たな価値の提供が技術的には可能であっても、その実現コストの高さが越え難いハードルとなっていました。しかし、技術革新が継続して進んできたことで、新しい価値実現に必要となるコスト面のハードルがどんどん下がってきました。あらゆるものに装備されたセンサー、それらのセンサーからのビッグデータを収集する通信インフラ、高速に学習するAIなどのクラウド環境が手軽に使えるようになってきました。

従来の「デジタル化」と今後の「デジタル化」

図.従来の「デジタル化」と今後の「デジタル化」

そして、これらの様々なコスト低減の根源にあるのが有名なムーアの法則です。従来は超えることが全く不可能と思われた高いハードルを、我々の想像を超えるスピードで下げ続けてくれるのがムーアの法則です。ジャーナリストであるトーマス・フリードマン氏は著書の中で、VW社の有名な自動車であるビートルにムーアの法則を当てはめると、過去50年のモデルチェンジで時速約772,000km、燃費はリッターあたり約850,000kmに、値段はたった4セント(約4円以下)に下がっている計算になると試算しています。ビートルは残念ながら来年生産終了予定とのことですが、デジタル化のテクノロジーはこれからもムーアの法則に則り、指数的に進化していくでしょう。

価値を生む新たな利活用を見出すことができれば、「デジタル化」はもっともっと推進していくことができます。どんな「デジタル化」を目指すのかをしっかり見定め、ムーアの法則に負けないスピード感で「デジタル化」に取り組んでいきたいものです。

2018年10月

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