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2018年06月01日

EV時代のものづくり⑤
~EV化で加速する「脱系列」~

日本の自動車産業は、自動車メーカーをトップにしたサプライヤーとのピラミッド構造からなる系列を維持しつつ発展してきました。各系列において、自動車メーカーはコアとなる新技術の開発を担い、系列内のサプライヤーにその新技術や生産技術を伝授します。サプライヤーは自動車メーカーの意に沿った部品を供給し、生産する部品の大半は、その上位企業向けとなります。

ピラミッド構造内のサプライヤー数は系列により異なりますが、大手自動車メーカーの系列であれば、数百のTier1サプライヤーと数千のTire2サプライヤーから構成されています。系列内の自動車メーカーとサプライヤーの間には、資本提携や人的関係も含めた緊密な信頼関係が築かれます。お互いの強い信頼関係によって、「すり合わせ」と呼ばれるきめ細かな連携が行われ、製品の開発と生産を一部並行して進めることができます。自動車は3万点もの部品からなる複雑な製品であり、安全性が厳しく求められる製品でもあります。各部品に厳しく求められる品質やコスト、納期を満たしつつ、自動車を市場に安定的に供給していくためには、系列は合理的な制度だと言えます。

自動車業界のピラミッド構造と系列

図1:自動車業界のピラミッド構造と系列

日本の自動車産業において、系列は長年大切に維持され、日本の自動車産業の競争力の源となってきました。欧米の自動車産業でも、20年以上前にはサプライヤーが特定の完成車と密な関係を保ち、取引の大半を委ねるという産業構造が見られたのですが、現在では系列は日本特有のものとなっています。
日本の自動車産業において、今も系列は深く根付いています。これまで「脱系列」を進めている自動車メーカーや特定の系列に属さないサプライヤーも出てはきましたが、まだまだ限られています。
しかしながら、最近の世界のEV化の流れが本格化してくると、次のような理由により、日本の自動車産業も「脱系列」が一気に加速していくと想定されます。

■理由1:部品構成が大きく変わることによる新規サプライヤーの急増

前回のコラム※1で見たように、EV化により自動車を構成する基幹部品がガラリと変わります。これにより、系列外の新規サプライヤーとの取引が増えると同時に、既存サプライヤーとの取引は減少していきます。さらに、新規サプライヤーは、グローバル市場のオープンな取引に慣れた電気機器業界など異業種からの参入が多く、系列とは無縁の関係です。
※1 EV時代のものづくり④~EV競争のカギを握るバッテリー~
http://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/20180501/

■理由2:増大する研究開発負担を技術力あるサプライヤーに依頼

自動車メーカーにとって、エンジン車と異なる技術を要するEVの研究開発投資は大きな負担となります。しかも市場は一斉にEVに切り替わるのではなく、しばらくは従来のエンジン車やHEVにも並行して開発投資していく必要があります。さらに、自動車メーカーはEVだけでなく、自動運転技術の研究開発も急がねばなりません。こうなると従来のように自動車メーカーがコアとなる新技術を全て担い、サプライヤーに伝授する構図は成り立たなくなります。自動車メーカーは、部品に関わる新技術開発については、系列に関係なく、技術力のあるサプライヤーに頼ることが多くなるでしょう。

■理由3:EVの標準化された部品には「すり合わせ」は不要

エンジン車の構造は複雑で、特にエンジン回りでは部品間の「すり合わせ」が不可欠でした。しかしEVになると部品構成がシンプルになり、部品の標準化が進んでいくため、必ずしも系列内のサプライヤーから調達する必要は無くなっていきます。自動車メーカーは製品コンセプトに最も適した部品を提供できるサプライヤーをオープンに探し、採用していくと考えられます。

これまでの系列の中では、サプライヤーは自動車メーカーの設計を受けて、品質やコストに優れた部品を生産すれば良かったのですが、今後「脱系列」が加速するとそれだけでは生き残れません。系列において重視された「すり合わせ」に代わり、「脱系列」にはイノベーションが求められます。「EV化に向け、どんな部品を作るべきか」、「どんな価値を創出していくべきか」、「競合他社にどこで差別化するのか」といったコンセプトをサプライヤー自らが構想し、率先して開発・生産していく必要があります。自動車業界のデファクトになるような基幹部品を開発し、それらを複数の自動車メーカーに供給できれば、サプライヤーであっても、自動車メーカーと対等の立場になり得ます。さらに、サプライヤーが主要な技術をもつサプライヤーを次々と吸収合併し、技術開発投資を継続していける企業規模になれば、自動車メーカーを逆支配することも起こり得るでしょう。
自動車業界のEV化が、サプライヤーにとって「脱系列」を前提にした、勝ち残るための新たなビジネスモデルを構築する大きなチャンスになることを期待します。

2018年6月

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