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2018年04月01日

EV時代のものづくり③
~業界を超えたゲームチェンジ~

自動車のEV化に伴い、業界内のゲームチェンジ、更には他の業界も交えたゲームチェンジが起ころうとしています。ゲームチェンジが起こると、企業間競争の土俵や条件が根底から変わり、競争相手の顔ぶれもガラリと変わってしまいます。時には、業界そのものが消えてなくなったり、あるいは他の業界と融合してしまったりすることも珍しくありません。

これまでも産業界では、様々なゲームチェンジが起こってきました。例えば、自動車業界以外のゲームチェンジとして、写真のフィルム市場がデジタル化により、デジカメ市場に置き換わり、写真フィルム業界はほとんど無くなっていきました。最近はデジカメ市場がスマホ市場へと急速に置き換わっていき、高精度の映像記録だけでなく、コミュニケーション・ツールとして競争するゲームチェンジが起こっています。

自動車業界のEV化は百年に一度の大転換と言われ、これまでの延長線上にない、予想外のゲームチェンジが起こる可能性があります。今回は、すでに顕在化しつつある3つのゲームチェンジのシナリオを見ていきたいと思います。

■シナリオ1:「EV化により、中国の自動車メーカーが自動車業界上位に」

このシナリオは前回のコラム※1で紹介したものです。エンジン車市場での競争優位性は、エンジン回りの技術力であり、多数の部品からなる複雑かつ高品質の製品を大量生産できる「ものづくり力」でした。ところが、EV市場になると、エンジンがモーターに変わってしまい、これまで日米欧の自動車メーカーが築いてきた圧倒的な競争優位性が、ほとんど無力化してしまいます。エンジン車市場からEV市場へという流れの契機となったのはCOP21という環境問題解決に向けた世界的な動きです。中国は自国の自動車産業の振興策によってこの流れを加速し、自動車市場を一気にEV市場という新たな土俵に変えてしまおうとしています。世界の約30%を占める最大の自動車市場である中国において、EVの購入優遇策や販売規制を行うことによって、自国の自動車メーカーが日米欧の自動車メーカーにどうしても敵わなかったエンジン車市場という土俵をリセットし、EV市場という土俵に変えようとしています。そこで先行投資・開発してきたモーターや電池の技術力で競争優位を確立していくことで、中国の自動車メーカーが世界の自動車業界の上位を占めるようになる、これがゲームチェンジのシナリオ1です。

EV化で、中国の自動車メーカーが自動車業界上位に

図1:EV化で、中国の自動車メーカーが自動車業界上位に

※1 EV時代のものづくり②~自動車業界のゲーム・チェンジ~
http://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/20180301/

■シナリオ2:「EV化により、IT業界が製品・サービスとしてEV提供」

先程のシナリオ1は自動車業界内でのゲームチェンジでしたが、このシナリオ2は自動車業界とIT業界をまたがるゲームチェンジです。自動車業界から見ると、「EVは自動車の電動化」です。しかし、これは自動車業界の視点であり、IT業界側から見ると、「EVはIT製品・サービスのラインアップの一つ」になります。EVになると、技術が標準化し、水平分業が進み、ものとしての自動車はコモディティ化していく可能性が高まります。となると、走行性や乗り心地という既成の価値ではなく、モビィリティ・サービスというコトの価値が差別化要因になっていくと見るでしょう。EVを自動車と見るのか、大きなスマホと見るのかの違いがあります。例えば、ものとしての自動車は、高級化すると車内に多数の操作スイッチやレバーが装備されて納車されますが、IT企業のEVは車内に一つのパネルがあるだけで、音声で機能操作でき、新機能は随時オンラインで自動アップデートされるといったように、発想が大きく異なります。

「EV化により、IT業界が製品・サービスとしてEVを提供」

図2:EV化により、IT業界が製品・サービスとしてEVを提供

■シナリオ3:「EV化により、家電業界がEV市場へ進出」

このシナリオ3は、自動車業界と家電業界にまたがるゲームチェンジです。家電業界は元々電気・電子・ソフトを得意とし、EVのキーテクノロジーとなるモーターや電池に関する技術やノウハウについても自動車業界に負けない経験知をもっていると見ることができます。また、自動車業界に比べ、いち早くコモディティ化の波にさらされてきた家電業界には、コトづくりに秀でたメーカーが出てきています。家のリビングで多くの時間を費やす消費者に対し付加価値を提供してきた家電メーカーは、同様に消費者が多くの時間を費やす車内でも、利用者視点の新たな価値を提供してくれると期待できます。自動車メーカーに劣らない技術力があり、消費者ニーズを把握している家電メーカーが、従来の自動車メーカーにはない発想で、EV市場に参入していく合理性があります。

EV化により、家電業界がEV市場へ進出

図3:EV化により、家電業界がEV市場へ進出

上記の3つのシナリオ以外にも、自動車部品メーカーや全くのベンチャー企業もEV化によるゲームチェンジを目論んでいるようです。業界や地域を問わず、どこでもゲームチェンジは起こり得ます。さらに、昨今のデジタル技術の急速な進化により、競争の土俵を変え、これまで当たり前だった競争ルールを変えてしまうチャンスは高まっています。同時に、業界を問わず、予期せぬゲームチェンジに巻き込まれ、市場を失う企業、不要とされる企業になるリスクも高まっています。各企業はこうしたゲームチェンジの可能性を先読みし、そこで自社が勝ち組となるためのシナリオを見定めることが大切であると考えます。

2018年4月

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