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2018年02月01日

EV時代のものづくり①
~自動車産業:1世紀振りの構造変革~

自動車産業においては、20世紀初頭から1世紀に渡り主役であったガソリンエンジン車から、今EV(電気自動車)に大転換しようとしています。世界の主要な自動車メーカーは、多少温度差はあるものの、相次いでEV車へのシフトを明言しています。例えば、ボルボ・カー社は、いち早く2019年全モデル電動化宣言を行い、テスラ社のCEOイーロン・マスク氏は「ガソリン車は蒸気機関の車のように過去のものとなる」と豪語しています。
そこで今回は、EV時代の自動車産業がどのように変わっていくのか、具体的にイメージしてみたいと思います。
EV時代の予測については諸説ある中で、一つのシナリオとして203X年自動車産業の様子を、マイケル・E・ポーター教授の業界分析フレーム「5-Forces」を使って描いて見ると、以下のようになります。

自動車産業の変化

図 203X年の自動車産業の変化イメージ

◆市場・顧客の変化:「ガソリン車やディーゼル車の新車購入はほぼゼロ」

先進国も新興国も環境問題のため、EV車の優遇施策や内燃機関車の販売禁止を打ち出してきました。EVの課題であった価格や性能がどんどん改善されていくのに呼応して、新車購入者はメンテナンス費用や燃料代が高い内燃機関車を避けていきます。充電環境の整備が進むと共に、ガソリンスタンドは減少していき、内燃機関車は一気に需要が減退します。

◆自動車メーカー競合の変化:「世界EV市場シェア上位は中国メーカー」

これまでは、日独米の自動車メーカーが自動車販売シェアの大半を占めてきました。中国はものづくりの色々な分野で急速に力をつけ、日独米のメーカーに肩を並べるようになってきましたが、複雑な構造で高度な技術を要する自動車については、まだまだ日独米の自動車メーカーに追い付くことはできませんでした。しかし、EVになると自動車の構造は簡素化されるとともに、日独米の自動車メーカーがこれまでの培ってきたノウハウや技術の多くがリセットされます。日本のものづくり企業が得意としてきた「すり合わせ技術」も、EVとなると優位性が薄れてしまいます。このように産業構造の変革を促進するために、中国は国策として各国の自動車メーカーがEVシフトするように仕掛け、EVに関する特許を他のどの国よりも多く出願することで、EV時代をリードしようとしています。

◆サプライヤーの変化:「部品4割が不要となり部品メーカーも新陳代謝」

自動車の代名詞であるエンジンやガソリンタンクを始め、エンジン周辺の駆動部品や伝達部品など、EVになると部品全体の約4割が不要となります。一方、EVで新たに搭載される部品が生れ、モーターや電池などで技術革新が進みます。車体軽量化のために、これまでボディやエンジンで使われてきた鉄板もアルミや炭素繊維など軽量素材に代わって行きます。このようにEV化で部品構成が様変わりし、部品メーカーも新陳代謝が進みます。

◆力関係の変化:「自動車メーカーと部品メーカーが対等」

特に日本の自動車産業では、自動車メーカーの下に部品メーカーが階層を成し、そのピラミッドにおいて中核技術をもつ自動車メーカーが絶大なる力をもっていました。しかし、EV時代では、自動車構造が簡素化され、自動車産業の水平分業化が進んでいくため、基幹部品を供給する部品メーカーと自動車メーカーは対等な関係となります。さらに、パソコン業界のCPUやOSのように、EV用基幹部品で高いシェアを獲得すれば、自動車産業の主役が自動車メーカーから部品メーカーに置き換わる可能性もあります。

◆新規参入の変化:「家電メーカーなど異業種からEV参入」

EVになると参入障壁が下がり、EVを製造・販売する家電メーカーやITメーカーが次々と現れてきます。メーカーだけでなく、EMSや量販店、そしてベンチャー企業も加わり、EV業界競争は激化していきます。

◆代替品の変化:「EVに集約」

次世代自動車として、EV以外にもHV(ハイブリット自動車)やPHEV(プラグインハイブリット電気自動車)、FCV(燃料電池自動車)なども有力候補となります。しかしながら、各国政府が内燃機関をもつ車の販売規制を強化していく中、各自動車メーカーは早くEVシェアを獲得し、開発投資を抑えていくために、やがてEVに集約していきます。

これらの変化イメージはあくまでシナリオの一つで、他のシナリオや見解についても次回以降考察していくつもりです。EV時代になると世界の自動車産業が大きく変わっていくのは間違いなく、とりわけ自動車関連産業に頼る日本経済には、大きな影響をもたらします。日本のものづくり企業は加速しつつあるEVシフトを好機と捉え、自社の対応を急ぎ、EV時代に勝ち残っていきたいものです。

2018年2月

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