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2016年08月01日

持続的成長のための管理会計②
予算管理の実効性を高める

企業目標達成のために効果的な計画が策定され、スムーズに実施されているでしょうか。経営者、マネージャーそして担当者は社内外の変化を認識し迅速に対応しているでしょうか。競争が激しくなる中、企業には収益拡大やコスト削減のために日々の改善活動とともに、新たなサービスや製品の市場投入、競争力を大きく高めるためのイノベーション活動が求められています。

多くの企業は、中長期と短期のバランスを保つために中長期での利益計画を策定し、これを実際の活動に結び付けるために年度利益計画(目標)を策定し、推進します。この年度での管理は予算管理とも言われます。

予算管理は予算策定(計画)と目標達成のための統制活動(実施・評価・改善)の2つの機能を持ち、利益目標達成までを管理する重要な制度です。今回は、利益計画を確実に達成するための参考として、予算管理制度において活動指標(実施内容とそのボリュームを数値化したもの)などを活用して利益/財務目標数値の達成を目指す例をお話します。

予算策定において計画の実効性を高めるために

予算策定の目的は、利益目標や方針を企業内に展開すること、利益目標達成のために効果があり実施可能性の高い計画を策定することにあります。

計画の効果には、今後実施する内容が財務上どのように影響するかについて明確でないものがあるために、実施内容(活動)とその効果を想定して計画を作る場合があります。想定で作った部分については実施後に効果を検証し以後の計画の参考にします。また、想定どおりに進捗していなければ期中に実施内容の修正を要する場合もあります。実施可能性の高い計画の要件としては、実施担当メンバーの納得が必要と言われ、これらメンバーの計画策定への参画が有効とされています。

企業の財務目標を達成するために各部門で計画を策定されていると思いますが、効果を計画策定中や事後に検証するか、計画策定に実施担当メンバーが参画するかについて、計画策定部門の判断に任せており、目標達成の課題となっている企業があると思います。例えば、営業部門で年度の財務目標達成のために顧客訪問回数を5割増やして売上高を伸ばすというストーリーで計画を作ったとします。このようなケースの課題としては、以前にも顧客訪問回数増を行っているのに事後の検証が不十分であるために、実施内容の効果を明確に想定できず、この実施内容で十分かがわからない。実施部門メンバーの中にも訪問回数増加に対する効果に疑問をもつ者、そもそも訪問を5割増しにできるか疑問を持つ者がいるなど、確実に実施されるか懸念がある、などが考えられます。

ここでは例の中の顧客訪問回数のことを活動指標と呼びます。この活動指標を予算管理制度の中で活用すること、実施内容の効果を検証すること、実施部門メンバーの計画策定参画することなどを制度化し、計画の効果や実施可能性の課題を解決することが考えられます。具体的には、各部門に展開された財務目標と部門で計画する実施内容が紐づけられ、全社目標達成のために各実施部門が何を行うかが明確になります。関係者は計画されている実施内容を理解しやすくなり、効果や実施可能性についての検証の基盤もできます。検証が促され、効果や実施可能性の高い計画策定につながると考えられます。

また、財務目標を達成するために実施すべき活動を考えるプロセスはマネージャーや担当者の人材育成にも有効だとの意見もあります。

統制活動(実施・評価・改善)において活動の効果を高める

統制活動では、計画を実施しその結果を評価し、計画値と実績値に差がある場合に、その原因を調査し改善措置を講じます。財務目標と実績の差の把握から入る企業が少なくないと思いますが、予算管理制度内で活動指標を活用する場合は、活動指標の目標と実績の差も評価します。財務目標達成に対する効果が明確でない活動指標については、計画策定時の想定が妥当であったかの検証も行います。想定が正しくなければ財務目標達成のための新たなストーリーの検討が必要となります。関連が明確な活動指標についても、どの程度財務数値に影響を与えるか、他により適切な活動指標がないか、今後考慮すべき事項がないかなどを検証します。

また、変化や競争の激化に対応するために、統制タイミングを見直す企業が増えています。月次決算処理を速めて統制タイミングを早める、これまでは月次で行っていた評価を週次にする、途中経過も評価しながら改善策を検討するなどです。効果が明確な活動指標については活動指標のみを先行して評価することもあります。目標との差がある場合には実施を担当している部門で改善策を検討します。早期改善は財務目標達成に有効です。

なお、外部環境変化などのために、現場の改善では対応できないことも起こります。こうした状況では、担当部門での改善を加味した見通しも考慮し、上位の組織階層にて可能な範囲で予算見直しなどを検討します。財務的影響を小さくするためには、早期に状況を把握し、アクションをとることが必要です。


企業目標を達成するための手法として、バランストスコアカード、報酬制度など、多くの手法が紹介されています。企業文化、従業員の価値観、知識や経験など企業によって違いがあるため、各種手法を適用すれば企業目標を達成できる組織に変われるとは一概には言えません。情報システムの進化や利用領域拡大などもあり、これまで取得や管理が難しいと思われていた管理指標の活用が可能となっている場合があります。グローバル化による市場範囲の拡大、人材が多様化する中、これまでの予算管理制度での目標達成に疑問を感じる部分があれば、実施部門における活動指標の活用も含めて予算管理制度の見直しを検討されてはいかがでしょうか。


2016年8月

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