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2016年07月01日

ビジネスモデルを変える⑦
プラットフォーム・ビジネスと製造業

楽天やアップルなどのネット企業、クレジット会社、鉄道会社はそれぞれ業種が異なるのですが、ビジネスモデル視点で見るとある共通点があります。ネット企業は自社のショッピングモールに、ものを売りたい様々な小売店とものを買いたい多くの人を集め、売買の仲立ちをしています。クレジット会社は多くのカード利用者と加盟店を取り込み、与信・決済を通した仲立ちをしています。鉄道会社は線路を敷いて駅を作ることで、その周辺に新たな住居やオフィスを呼び込み、駅や住宅に集まる人達を当てにした商業施設などを次々と集めてきます。つまり3つの企業の共通点は、ものやサービスを必要とする人とそれらを提供したい人たちを集め、引き合わせる場を創り出していること、多くの人や企業がその場に乗ることで利便性や利益を享受できることです。

このように効率よく取引の相手を見つけ、商取引を行うことができる場はプラットフォーム(基盤)と呼ばれます。そして、プラットフォームを提供する人をプラットフォーマ―、プラットフォーム上でものやサービスを売り買いする人はプレーヤーと呼ばれます。必ずしも商取引に限るのではなく、FacebookやLINEのように情報交換やコミュニケーションを仲介する場もプラットフォームに含まれます。プラットフォームはあくまで基盤であり、その上でものやサービスを提供するのはプレーヤーです。そしてプラットフォームが果たすべきコア機能が、プレーヤーを引き合わせること(マッチング)です。

プラットフォーム・ビジネスのイメージ
図 プラットフォーム・ビジネスのイメージ

プラットフォーム・ビジネスの一番の特徴は、プラットフォームに加わるプレーヤーが増えれば増えるほど、プレーヤーにとっての価値が高まることです。クレジットカードの利用者が増えれば、カードが使える加盟店も増えていきます。新たに開発した駅周辺の住民が増えれば、関連施設が増えていくことで、住民の利便性が増し、施設の売上の伸びが期待できます。このようにプレーヤーがプレーヤーを呼び、相乗的に価値が高まることで、循環的にプレーヤーが増えていくことがプラットフォーム・ビジネスの特徴です。プラットフォーム・ビジネスではプレーヤー数がしきい値を超えると、プレーヤーの集積が一気に加速していくといわれています。プレーヤーが増える程、取引相手を見つける機会が増え、取引のコストは低くなるため、プラットフォーム全体の価値も高まっていきます。

収益面では、プラットフォーマーは、プレーヤーの取引に課金することで利益をあげるのが基本ですが、利用者向けの広告で収益を得ることで、プレーヤーのプラットフォーム利用を無料とする場合もあります。プラットフォーマーはプラットフォーム運営のルールなどを決める大きな権力を持ちます。情報面では、プラットフォーマーは、プラットフォーム上のプレーヤーや取引に関する貴重な情報を把握できる立場にいます。さらに、プラットフォーマーはプレーヤーとの人脈やビジネス・ノウハウも次々取り込んでいくことができます。このように、プラットフォーマーはお金・情報・人脈・ノウハウを集めることができる立場にいます。しかも、プレーヤーが増えるに従いこれらは大きくなっていくため、プラットフォーム・ビジネスは、大変魅力的なビジネスモデルとなります。

以前は、鉄道会社やクレジット会社のように、プラットフォームを提供するには大きな資本力やブランド力が必要となり、それらを提供できる企業は限られていました。しかし、昨今はさほど資本力やブランド力がなくても、プレーヤーを引き付けるアイデアがあればネット上にプラットフォームを築くことができます。

製造業においても、すでにプラットフォーム・ビジネスを実践し、成功を収めているメーカーがあります。B to Cの例としては、アップル社のiTunesやiPhoneが、音楽やアプリなどのコンテンツを取引するプラットフォーム・ビジネスで成功しているのは有名です。B to Bでも、GE社は産業データとアナリティクス専用に設計されたプラットフォームPredixを提供し、プラットフォーム・ビジネスを実践中です(昨年11月のコラム「GE社に見るプラットフォーム型ビジネスモデル」参照)。また、ドイツのIndutrie4.0や米国のIndustrial Internet、中国の中国製造2025など各国の第4次産業革命に向けての取組は、製造業における国を挙げてのプラットフォーム・ビジネス競争と見ることができます。

今後は製造業のサービス化が一層進んでいくと考えられます(今年2月のコラム「製造業のサービス化」参照)。ものを売るのではなく、機能をサービス化して売るときに、プラットフォームは有効に機能するため、プラットフォーム・ビジネスに取り組むメーカーも増えていくでしょう。このように製造業が新たなビジネスモデルを検討していく際に、プラットフォーム・ビジネスは有望な選択肢となります。


2016年7月

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