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2016年02月01日

ビジネスモデルを変える②
製造業のサービス化

製造業において、生産した製品を販売するのではなく、サービスとして提供する新たなビジネスモデルが最近注目されています。「製造業のサービス化」(英語でServitization)と呼ばれるこのビジネスモデルは、モノの価値提供だけではなく、「サービス化」によってコトの価値まで提供するものです。製造業でサービスというと、製品の修理や保守などを思い浮かべる人が多いと思います。これまでも、メーカーはお客様に対して、製品の修理や故障を予防する定期保守サービスを提供してきましたが、これらは和製英語で「アフターサービス」と呼ばれるように、まさに製品販売後に提供されるサービスです。一方、「製造業のサービス化」では、製品を販売するのではなく、製品を通じたサービスを提供するビジネスモデルとなります(下図参照)。

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図.製造業で提供されるサービス

お客様が製品を購入するのは、「それぞれの目的を実現するための手段として、製品が持つ機能の価値に対価を払っている」と解釈することができます。この解釈によると、製品が使用され目的とする機能を果たしている時は、価値を提供していると言えるのですが、製品が使われていない時や故障して使えない時は、全く価値を提供していないことになります。さらに厳密に見ると、使われていない時は価値を提供していないどころか、電気代やスペース費用だけが発生しているとも見なせます。「製造業のサービス化」では、製品がお客様にもたらす価値のみを切り出して、サービスとして提供していきます。メーカーにとって「製造業のサービス化」は、これまでのように作った製品を販売するのではなく、利用してもらうことで利益を上げることになります(上図参照)。

「製造業のサービス化」には「従量ベース」「成果ベース」の2つのタイプがあります。事例を交えて見ていきましょう。


1.従量ベースのサービス化

電気やガスと同様に、製品を使った分だけ支払ってもらうサービス化です。 有名な例として、走行距離に応じてタイヤ使用料を支払う「マイレージ・チャージプログラム」というサービスがあります(仏 ミシュラン社)。タイヤ内にセンサーを取り付けることで、単に走行距離だけでなく、タイヤの利用実態に関する有用な情報がいろいろ把握できます。ミシュラン社がモノとしてのタイヤを販売するのではなく、「サービスとしてのタイヤ(Tire-as-a-Service)」を提供することで、お客様はタイヤに関するメンテナンスや廃棄などから解放され、タイヤに関するトータル経費を最適化できます。一方のミシュラン社もサービス化することで、タイヤ単体を販売する市場から、その運用や経費最適化サービスなどの市場まで参入していくことができます。
同様のサービス化例として、世界的工具メーカーであるヒルティ社による「フリートマネジメント」という月々の定額使用料サービスがあります。工具の使用料に加え、修理、代替機付与、利用管理などの費用を含めたサービスを、定額で提供しています。このサービス化により、お客様は工具の運用管理に関する業務負荷を大きく軽減させることができ、ヒルティ社にとってもお客様業務への関与を深めることで、競合企業に対する競争優位性を高め、利益率向上につながっています。


2.成果ベースのサービス化

こちらのサービス化は、お客様にとっての成果そのものに対価をいただきます。この例としては、航空機エンジンの出力時間に対して課金する「Power-by-the-Hour」というサービスがあります(英 ロールスロイス社)。航空機のエンジンにリアルタイムの監視センサーを組み込むことで、稼働管理や運航管理、航空機の位置情報などを取得します。そして、これらの情報を活用した適切な予防保守、さらには航空機エンジンの推力を最適化するようなサービスが提供されます。
もう一つよく参考にされる例として、オランダのフィリップス社が米国ワシントンDCと契約した公共駐車場における照明サービスがあります。ワシントンDCは公共駐車場をLED電球に替えるに際し、LED電球を購入するのではなく、削減できた電力料金の一部を一定期間フィリップス社に支払う契約をしたそうです。これによりワシントンDCは、初期投資することなく電気代を削減できることになり、一方のフィリップス社は、サービス提供で継続的に利益を得ることができます。


製造業において製品のコモディティ化が進むと、急激に価値が下がっていきますが、戦略的にサービス化することで、製品に新たな価値を付加することができます。製品単体を販売するビジネスモデルがそのまま通用する市場や事業もありますが、特に競争の激しい分野においては、サービス化を進めていくことが、差別化や付加価値の増大につながると考えます。


2016年2月

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