ものづくりコラム 設計、生産管理、原価管理などものづくりに関するトピックを毎月お届けします。

2010年12月01日

PLMへのアプローチ

PLMとは

先ごろ「日経ものづくり(2010年9月号)」に「PLMシステムに対する認識と導入・運用の実態」という調査結果が掲載されました。それによりますと、「PLMをイメージできないという回答が5年前とほぼ同じの55.6%」に上ったとのことです。PLMをご提供しているものとしては、非常にショックな数字です。その背景を見てみますと、「抽象的な情報ばかり」、「言葉の定義があいまい」、「システム間の連携ができていない」といったご指摘が目に付くようです。このご指摘の点についても、きちんと対応していたかと大いに反省させられます。
ここで、原点に立ち返って、PLMとはいかなるものかを考えてみたいと思います。PLMとはProduct Lifecycle Managementの略称で、「製品ライフサイクル管理」と呼ばれていることはご存知のことと思います。その定義はというと、各社が独自に得意分野を強調した定義を行い、業界標準的な定義というものはあまり見かけません。このようなところも上記のような調査結果になった原因とも思われます。
私どももPLMとは、「製造業において、企画・開発から設計、調達、製造、出荷、出荷後のサポートやメンテナンス、生産・販売の打切りまで、製品にかかわるすべてのプロセスや情報を包括的に管理すること。そして、それらの最新情報を製品開発・販売・製造にかかわる社内だけでなく社外のパートナーも含めた全ての人々が必要なときに迅速かつ確実に活用できるようにすること。それによって、製品の開発期間の短縮、生産過程の効率化、タイムリーな市場投入を実現し、企業収益の最大化を図ること」と考えています。
やはり言葉にすると、抽象的でイメージがわきにくいですね。また、「抽象的な情報ばかり」、「言葉の定義があいまい」とお叱りを受けそうです。ここでは、私どものPLMへの取り組みと最近のPLMへのアプローチについてご紹介し、具体的なイメージが描けるように何回かに分けてお話していきます。

PLMの2つのアプローチ

私どもは1983年設立以来、専任部隊を設けCAE/CADといったエンジニアリング系のシステム構築に積極的に取り組んできました。図面管理を中心としたPDM(Product Data Management 製品データ管理)システムの構築ご支援から、製品のライフサイクルを考慮したPLMのご提供へと展開してきました。いわば、CADからのPLMアプローチを行ってきました。現在でも、組立製造業向けに多くの要員を配置し、この分野のシステム構築・提供を行っています。一方、1997年からはERP本部を設け、ERPパッケージであるSAPを中心とした事業を立ち上げ、現在では数多くの陣容でSAPの導入支援を行っています。
近年SAP社は、PLM領域にも力を入れ始め、PLMをERPに包含してきています。ERPからのPLMアプローチとも言えるでしょう(図1)。CADからのPLMアプローチの経験豊富な私どもからみましても、このアプローチはシステム間の連携において高く評価でき、本年8月ERP本部の中にSAP-PLM専属のグループを設け、本格的な支援を開始したところです。以下に2つのアプローチの特徴をまとめます。

  • CADからのアプローチでは、設計の成果物である3次元データおよび部品・製品情報を、製品の誕生から廃棄に至るまで共有するという考え方です。それに加えてERP側から各種実績情報(販売、製造、原価、保守、品質等)を取込み設計者に提供する、製品情報を反映した設計部品表を生産準備としてERP側に送り込む、といったERP側との連携を強める動きが出てきています。
  • ERPからのアプローチでは、基幹系業務としての生産部品表(販売部品表、調達部品表、製造部品表、保守部品表などで以下生産部品表と総称します)の維持管理、および製品に関する各種実績情報を、ライフサイクル全般にわたって共有するという考え方が主流です。SAPではこれに加えて従来基幹系業務の対象として認識の薄かった開発・設計業務にも焦点を当て、生産部品表の上流の構想部品表・設計部品表など設計業務の成果物までも管理対象とするように広がりを見せています。

どちらのアプローチでも、CAD側とERP側の情報を相互に取込み、いかに活用するかが課題になります。

図1.PLMの2つのアプローチ

図1.PLMの2つのアプローチ

ERP側からのPLMへのアプローチ、SAP-PLMの特徴

ERP側からのPLMへのアプローチであるSAP-PLMは、実際に企業で活用されていたものをベースに開発してきたものです。特に製造業の背骨である部品表を中心にして、現実に発生した多くの厳しい要求を反映したソリューションであり、その特徴は以下のようになります。

  1. 最上流の構想段階から生産段階の各種部品表まで全ての部品表の統合管理を実現
  2. コンポーネントの組合せによる製品のバリエーション管理の実現
  3. 設計業務に対する基幹系情報の提供、CADデータ取込みなどの連携支援
  4. 設計変更時、設計部品表と製造部品表の同期支援
次回からこれらの特徴について順を追って説明していきます。

2010年12月

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