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2010年09月01日

国際会計基準(IFRS)適用による製造業の管理会計と原価計算への取組み(その2)

今回の解説は下記項目の4.を対象とします。

1. 国際会計基準(IFRS)導入による連結財務諸表を作成するまでの流れ
2. 管理会計強化のための会計情報システム構築のポイント
3. セグメント情報開示のポイント
4. 原価計算システム構築のポイント

前回掲載分はこちら → 国際会計基準(IFRS)適用による製造業の管理会計と原価計算への取組み

※IFRS(International Financial Reporting Standards)は国際財務報告基準のことですがメディアでは国際会計基準と呼ばれています。

4.原価計算システム構築のポイント

1. IFRSにおける原価計算について

IFRSにおいて原価計算に関する規定は部分的にIAS第2号「棚卸資産」に記載されているだけで詳細な規定はありません。
*IASは以前の国際会計基準のことで、今はIFRSに引き継がれています。
従って、現行の日本の原価計算基準を遵守していれば、一般に公正妥当と認められた原価計算の方法と想定されますので、そのまま適用が可能だと思います。

ポイントとしてはIFRSにおける原価の配賦に関する規定があげられます。
IFRSでは配賦基準として正常生産能力を用いることとされているため、実際操業度を基準とした配賦や予定操業度についてIFRSで適用するためには、客観的で説得力のある資料があれば可能と思われます。

日本基準においては多額の原価差額が発生した場合、財務報告用に売上原価と期末棚卸資産へ配賦処理を行う必要がありますが、実務上製品ごとに配賦しているのはあまりないと思います。
会計処理上は一括で売上原価、期末棚卸に配分し仕訳されるケースが多くみられます。
しかし、IFRSでは一括して棚卸資産の評価減を行うことが認められていないため、製品ごとに評価減処理の調整をしなければなりません。
*正常生産能力とは生産能力及び販売可能な期間を考慮し、正常な状況で期間を通して、達成可能とされる生産量のことです。

IFRSにおける原価計算と評価減処理

2. 標準原価

標準原価については、IFRSはその適用結果が実際原価と近似する場合にのみ、簡便法として使用が認められています。
標準原価は正常な材料費、労務費、製造経費と正常な能率・生産標準を前提として計算します。
標準原価は定期的に見直され、必要に応じて、その時々の状況を配慮し、修正されます。

3. グループにおける原価計算方式の統一

IFRSにおいては企業グループ内において、同種の棚卸資産については同じ原価計算方式を使用しなければなりせん。同種の棚卸資産は地理的に場所が異なるという理由で異なる原価計算方式を採用することをIFRS上は認められていません。
例えば、同じ品目で、日本工場では平均法を採用している場合、タイ子会社では先入先出法を採用するといったことは認められませんので、まずはグループ会社における原価計算方法を調査し、実態に合わせて原価計算方式の統一をはかる必要があります。

企業グループ内での原価計算方式統一

4. 原価計算システムヘの影響

原価計算をシステムで行っている場合は操業度差異を把握し、適切な製品又は製品グループ毎に原価差額を配賦するような配賦ロジックを考慮する必要があると考えられます。
原価差額の適正な処理により、製品又は製品グループごとに製品原価が適切に管理されるため、原価管理の観点からもメリットがあると考えられます。

製品又は製品グループ毎の原価差額配賦システムの追加

2010年9月

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