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2018年07月01日

AIの発展を加速させる!?脳型コンピューター

車の自動運転で使用される画像認識、AIスピーカーで使用される音声認識、自動翻訳で使用される自然言語処理など、さまざまな分野でディープラーニング※1の実用化が広がっています。

ディープラーニングによってコンピューターが学習するためには大量の計算を行う必要がありますが、その課題を解決するために、ディープラーニングに特化したコンピューターである脳型コンピューター※2の開発が進められています。

※1:AIの未来を支えるディープラーニング
https://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/20170301/

※2:ニューロコンピューターとも呼ばれます。

脳型コンピューターとは

ディープラーニングの利用が拡大するにつれ、必要とされる処理性能や消費電力が課題になっています。現在一般のコンピューターで使用されているCPUなどの演算装置は、過去にはムーアの法則に従って性能が倍々と向上してきましたが、昨今では消費電力に対する性能が頭打ちになってきています。

そこで新しいアーキテクチャとして期待されているのが、人間の脳を模した脳型コンピューターです。脳のニューロン(神経細胞)とシナプス(ニューロンのつながり)を再現したチップを大量に搭載しています。これによって、ディープラーニングで使われるニューラルネットワークという計算モデルを物理的に再現できるのです。(図1)※3

ニューラルネットワークと脳型コンピューター
図1:ニューラルネットワークと脳型コンピューター

※3:脳型コンピューターの開発プロジェクトは世界各地で行われており、人間の脳を正確に再現することを目的とした流派と、ニューラルネットワークでの利用を目的とした流派の2つに大きく分けられます。本稿ではより短期的な応用がわかりやすい後者に注目します。

脳型コンピューターのメリット

脳型コンピューターで期待されているのは、高速化と低消費電力化です。
現在のほとんどのコンピューターはCPUがメモリから命令を次々に取り出して実行し、結果をメモリに書き込むノイマン型というアーキテクチャを採用しています。現在は、このCPUとメモリの間の通信がボトルネックとなり、性能向上が難しくなっています。これに対し、脳型コンピューターでは大量のニューロンが独立して並列に動作し、シナプスによって互いに影響を及ぼします。これによって個々のニューロンの処理能力を高めやすくなり、全体として高速化が期待されます。

現在のコンピューターのCPUでは、計算処理の量に応じて一部だけを停止することは難しく、基本的に全体が動作しているので消費電力が大きくなります。脳型コンピューターでは、大量にあるニューロンのうちシナプスで信号を受けたニューロンのみが独立して動作するので、消費電力を抑えられるとされています。

脳型コンピューターの適用例

脳型コンピューターの適用場所は「クラウド」と「デバイス」に大きく分かれます(図2)。クラウドでは、文章の翻訳やAIスピーカーでの音声認識など、ディープラーニングを活用したアプリケーションが提供されることが増えています。アプリケーション提供側から見ると、利用者の増加に従ってクラウドで必要な計算量は増えるので、処理を高速化・低消費電力化することで費用を節約できます。

スマートフォンやIoTデバイスなどのデバイス側では、消費電力が少なくなることで、高度なディープラーニングの機能が積極的に使われるようになるでしょう。例えば、スマートフォンが常時音声認識を行って能動的に話しかけなくてもアシスタントのように必要なことを先回りして用意してくれたり、プロのカメラマンが行っているような複雑なカメラ操作をコンピューターが画像認識で瞬時に行って自動的に撮影できるようになったりするかもしれません。

クラウドやデバイスにおける脳型コンピューターの適用
図2:クラウドやデバイスにおける脳型コンピューターの適用

このように脳型コンピューターによって、クラウドやデバイスでのAI関連の活用が加速すると考えられます。
なお、脳型コンピューターは現在主流のコンピューターを完全に置き換えるものではありません。脳型コンピューターはニューラルネットワークに特化しているため、現在のコンピューターが得意とする単純な計算などの処理を苦手とします。このため、1つのデバイスに両方のコンピューターが組み込まれて、得意分野によって使い分けることになるでしょう。

2018年7月

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