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2018年06月01日

自動運転に必要な情報がすべてこの中に
~ダイナミックマップ~

ダイナミックマップの必要性

ダイナミックマップとは、地図情報だけでなく運転に必要なあらゆる情報がリアルタイムで収集される技術です。近年、交通事故発生件数や死傷者数は減少傾向にあるものの、長時間運転の疲労やうっかりミス、高齢者の運転ミスなどによる自動車事故は後を絶ちません。このような事故への安全対策の一つとして、自動運転の実用化への期待が高まっています。その自動運転の実現に向けて、欠かせない革新技術としてダイナミックマップがあります。

ダイナミックマップのしくみ

ダイナミックマップとは自動運転に必要な情報が集められたマップに欠かせない技術と説明しましたが、自動運転用の車には高性能なセンサーやAIが装備されます。なぜそれだけでは自動運転が実現できず、ダイナミックマップが必要となるのか。その理由について説明します。

まず自動車の運転は、認知、判断、操作の3要素から成り立っています。目と耳を使って周辺状況を“認知”し、何をすべきかを脳で“判断”、手足を使ってステアリングやペダルを“操作”します。これを自動運転では、カメラやレーダーなどのセンサーで“認知”し、人工知能(AI)で“判断”、油圧や電動のアクチュエーター※1でスロットルやブレーキ、ステアリングを操作します。
ここまでの要素があれば、ロボット掃除機のような軽微な自動運転であれば実現することが出来ます。しかし、自動車の運転は自分の他にも自動車や歩行者などが目まぐるしく動作し、判断を一歩間違えれば命を落とす危険があります。そのため、自動運転には高度な安全対策が求められます。たとえば左折をするのであれば、あらかじめ左の車線に移動しておく必要があるし、信号機が青であっても、黄色や赤に変わっていく可能性も想定する必要があります。また横断歩道があれば、歩行者が道路を渡ろうとしているかどうかを確認する必要もあります。このように人間が運転経験を元にして、状況を先読みし、無意識のうちに取っている行動を自動運転でも実現するために、細かい情報がつめこまれたダイナミックマップが重要となります。

※1:油圧や電力モーターから入力されたエネルギーを機械的に並進、回転運動に変換する起動装置のこと

自動運転に必要な情報
図1:自動運転に必要な情報

ダイナミックマップの活用例

ダイナミックマップは、既存の地図と比べて、2つの大きな特徴があります。

1つ目は「高精度空間情報」と呼ばれる精密さです。
道路はただ道幅だけを示すのではなく、車線、停止線まで誤差数センチの正確さで記録されています。さらに道の勾配や、信号や標識、街路樹や街頭、道路沿いの建物まで立体データとして読み込まれるため、カメラやレーザーという「目」で周囲を認識し、ダイナミックマップと照らし合わせて自分がどこにいるのかを正確に把握しながら走行することができるようになります。

2つ目は情報の厚みです。(図2)
高精度空間情報を基層として、その上に時間軸の異なる情報を多層的に組み合わせて作られています。1階層目は1か月単位で動く、路面情報などの静的情報。2階層目は1時間単位で動く、交通規制や広域気象情報などの准静的情報。3階層目は1分単位で動く、事故、渋滞情報などの准動的情報。4階層目は周辺車両や信号などの動的情報といった4階層で構成されます。このようにさまざまな情報がリアルタイムで更新されるダイナミックなマップになっています。

ダイナミックマップ情報階層
図2:ダイナミックマップ情報階層

ダイナミックマップは自動運転のために作られたものですが、用途はそれだけではありません。その1つがパーソナルナビゲーションです。
高齢者に向けた段差情報やバリアフリーの情報提供や、近づいてくるクルマの位置や速度など、歩行者の周囲の詳細な情報がリアルタイ ムにわかるので、それを音声で目の不自由な方に知らせれば安全・安心な誘導ができます。また、公共交通機関や物流などでは、走行中の バスやトラックの位置を会社のコンピュータでリアルタイムに知ることができるだけでなく、その速度や周囲の天候、渋滞の有無などもわ かります。より効率の良い運行を会社から遠隔コントロールすることが可能となるでしょう。他にも、防災・減災においては、高精度な3D マップなので、災害のシミュレーションといった面で期待できますし、社会のインフラ維持管理では、トンネルや路面などのメンテナンス に先立つ予兆情報を入手することができます。
それ以外でもまったく新しいビジネスやサービスが生まれる可能性もおおいにありますので、ご注目下さい。

2018年6月

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