これからは、コレ!旬なIT技術やこれから主流となりつつあるIT技術に関する情報をご紹介します。

2018年03月01日

ブレイン・コンピューター・インターフェース
~頭で考えるだけで情報機器とつながる近未来の姿~

人間と情報機器をつなぐインターフェースの過去と現在

ITは私たちの暮らしの中でますます欠かせないものとなっています。そこで今回は、人間と情報機器をつなぐインターフェースに目を向けてみることにします。

人間とITの関わり方を振り返ると、図1のように、指でキーを打つ"キーボード操作"から始まりました。その後スマートフォンなどで私たちが当たり前のように使っている"タッチ操作"が普及したことで、情報機器を使うハードルが下がり、多くの老若男女が情報機器を使えるようになりました。そして現在、更なる変化点を迎えています。

その変化とは、2017年12月コラム「時代を先取り?! AIスピーカー!」(※1)でも取り上げた、AIスピーカーなどで使われている音声認識の技術とデバイスが実現する"音声操作"です。この"音声操作"が実用化されたことにより、もはや情報機器に触れる必要もなく、様々なことが可能になってきています。例えばスマートフォンも使えないような高齢者や小さな子供であっても、言葉を話すだけで情報機器を操作できるようになりました。
言い換えると情報機器を使うことをあまり意識する必要がない時代がやって来ていると言えます。

インターフェースの過去と現在
図1.インターフェースの過去と現在

※1 時代を先取り?! AIスピーカー!
https://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/20171201/

近未来のインターフェース:ブレイン・コンピューター・インターフェース

さて、”音声操作”は実用化されているものの、まだ発展途上であり、支えている技術であるAI(人工知能)のさらなる進化が期待されます。そして、音声操作とは別の方法で人間と情報機器をつなぐインターフェースとして、脳波等の検出や脳への刺激によって脳とコンピュータ等をつなぐ”ブレイン・コンピューター・インターフェース”(以下 BCI:Brain Computer Interface)が注目されています。2017年は米国の有名起業家イーロン・マスク氏や、Facebook社がBCI関連の開発を計画していることを発表して話題になりました。

BCIは、脳波を読み取るデバイスの実現方法の違いによって2つのタイプに分けられます。1つは、外科手術により、脳そのものに電極(デバイス)を刺す方法(侵襲型:しんしゅうがた)、もう1つは、ヘッドセットなどのようなデバイスで頭を覆うことで脳波を読み取る方法(非侵襲型)です。それぞれ以下のようにメリット、デメリットがあります。

メリット デメリット


  • 得られる脳波の検知精度が相対的に高い
  • 手術が必要で費用がかかる
  • 脳への影響の可能性と倫理的課題がある



  • 手術が不要で人体に安全である
  • 頭部全体からの脳波を取得できる
  • 得られる脳波の検知精度が相対的に低い
  • 得られる信号が限られており、まばたきなどでノイズが入り易い

脳と機械の連動としては、まず医療の世界で研究が進みました。ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病で四肢が麻痺した患者の運動・リハビリ支援、意志伝達手段などが目的です。手足が動かせなくても、電極を脳に刺し(侵襲型)、脳波の変化を読み取ることでモノを操作することを実現しようとしています。
“非侵襲型”はヘッドセット等のデバイスの性能が重要になりますが、冷却シートを額に貼るような感覚で、容易に装着することができ、計測制度も高い「パッチ式脳波センサ」も開発されています。

ブレイン・コンピューター・インターフェースの実用化

BCIの実用化はこれからの段階ですが、これまでも実証実験などは欧米だけでなく、日本でも行われています。BCIを上記の医療での適用だけでなく、私たちの生活やビジネスでの利用を考えた場合、手術が不要でコストも抑えられる”非侵襲型”での実現が現実的であり、特に日本では”非侵襲型”での研究や実験が進められてきました。

例を挙げると、2012年には総務省の研究委託で、複数企業の共同推進でBCIの一般生活環境への適用が行われました。これは高齢者や体の不自由な方々の自宅内での移動や家電製品の制御をBCIで実現するという実験で、自立社会の実現に役立つことを目指したものでした。

また、NTTデータグループ他、複数企業の共同研究で、人間が動画を視聴した時の知覚情報を定量的に評価する技術を開発しています。これはテレビCMなどの動画広告を人間が視聴している間の脳波を測定し、広告の効果を定量化することを目指しています。これにより、どのような広告が人間の 感情に強い影響を与えるかという効果を可視化でき、広告主のプロモーションに生かすというサービスにつながります。
このように、人間の知覚情報をBCIによって定量化できれば、広告の効果測定以外にも、ストレスや疲労によるヒューマンエラーや事故を防止するなど、様々な応用が期待できます。

ITの大手調査会社ガートナーでは、今後の急速な技術革新によって、最も優先度が高まる技術の1つとしてBCIを挙げています。人間と情報機器をつなぐインターフェースとして、BCIは先に紹介した音声操作に取って代わるものではなく、今後それぞれ進化して、私たちの暮らしに欠かせないものになることでしょう。

2018年3月

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