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2018年01月01日

最近話題の量子コンピュータってなに?

初の国産量子コンピュータの試作機(量子アニーリング型)に、国内外の研究者からの注目が集まっています。2017年11月に、クラウド環境でこの試作機による「組み合わせ最適化問題」の計算が、体験できるというニュースが発表されたためです。

「何かすごいことができるようになっている!」とはわかっていても、そもそも量子コンピュータとは何?何ができるのか?どうすごいのか?と思われている方も多いのではないでしょうか。 今回は、量子コンピュータについて簡単にわかりやすくご紹介します。(※1)

※1 わかりやすく解説をすることがメインですので、論文や実際の仕様とは異なる表現もあります。

量子コンピュータと一般的なコンピュータの違い

まずは、私達が普段使用している一般的なコンピュータ(※2)との違いについて説明します。
私達が普段触れている一般的なコンピュータは“0”か“1”かの2つの値をもとに設計されています。これはコンピュータを構成している部品の電圧の低い状態を“0”、高い状態を“1”として、信号のあるなしを解釈して計算しています。 では、量子コンピュータはどうかというと、量子の“0”である場合も“1”である場合も、同時に存在する“重ね合わせ状態”(※3)という振る舞いを使って計算します。これにより、”0”である場合も“1”である場合も一度に計算できるというのが量子コンピュータの計算方法です。

※2 量子コンピュータと普段私達が使用しているコンピュータを区別して一般的なコンピュータと表現しています。
※3 量子の“重ね合わせ状態”とは、量子力学で検証されている、“0”である確率が50%、“1”である確率が50%という状態のことです。量子コンピュータではその振る舞いを行なうものを量子ビットと呼びます。

量子コンピュータが優れている部分“重ね合わせ状態”とは

ここからはそれぞれの計算方法の違いによって、できることがどのように違うか紹介します。
例として、“0”と“1”の値を持つことができる箱(ビット)を一つ用意し、その値を入力した際に反転(“0”→“1”、“1”→“0”に変換)するという処理を行なう場合で考えてみます。 まず、この処理を一般的なコンピュータで行なう場合、
① 0→1
② 1→0
上記のように、それぞれの数字を一度ずつ入れることになり、2回計算が必要です。

計算の違い
図1.一般的なコンピュータと量子コンピュータの計算の違い

対して、量子コンピュータでの場合は、“0”である場合も“1”である場合も同時に存在する“重ね合わせ状態”を使って計算を行うため、一つの箱(量子ビット)の中に“0”と“1”が同時に存在する値を入力として利用できます。そのため、入力を先程の値を反転させるということが1回の計算で行えます。
このように、一般的なコンピュータでは2回計算が必要だったのに対し、量子コンピュータは1回の計算で同様の問題を解くことができます。

2種類の量子コンピュータ

これまでの解説より、最近話題の量子コンピュータは一度に複数の計算できるから性能がすごいと思われた方が多いと思います。しかし、必ずしもそうであるとは限りません。 量子コンピュータと呼ばれるものには「量子ゲート型」と「量子アニーリング型」の2つの種類があります。

1つ目の「量子ゲート型」は上記で説明した通り、“0か1かの重なり合う状態”という量子の振る舞いを利用して計算を行うものです。一般的なコンピュータで時間がかかる処理を並列で実行することによって高速に処理するもので、イメージとして、量子コンピュータとは値が“0”か“1”かの曖昧な状態で計算ができ、素因数分解などの特定の分野において非常に有効な計算方法と考えてください。こちらは、Google、IBM、インテル等の各社が開発を行っています。

2つ目は、「量子アニーリング型」と呼ばれるものです。これは先程の「量子ゲート型」とは違い、量子ビットを大量に用意した上で、外部から刺激を与えて状態を“観測”するものです。もう少し詳しく説明すると、“0”か“1”かの重ね合わせ状態を利用して、相互に作用の強さ(※4)や外部からの刺激などのパラメータを変えることにより量子ビットが自然な物理方式に従って最適解を求めるというものです。そのため、「量子アニーリング型」は、多くのパターンを考慮してしらみつぶしに調べないと分からない組み合わせ最適化問題(巡回セールスマン問題等)の分野において非常に適していると言われています。

※4 量子同士の作用の強さ(隣の量子ビットが“0”の確率が多いと自分も“0”の確率が高くなる。

最適解の求め方
図2.量子アニーリング型の最適解の求め方

量子コンピュータのこれから

量子コンピュータの商用化というニュースが話題になっていますが、一言に「量子コンピュータ」といっても種類があり、実現している仕組みによってできることや解の求め方が違っています。特に「量子アニーリング型」は、組み合わせ最適化問題に適しているため近年話題のAI機械学習分野においても、量子コンピュータが有効だと言われています。

約40年前から量子コンピュータという分野が研究されてきていますが、最近は大きく話題にもなり、実用レベルに近づいてきています。
まだまだ発展途上ですが、今後の量子コンピュータの動向にご注目下さい。

2018年1月

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