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2017年08月01日

高精度の位置情報を提供する
~準天頂衛星システム~

生活に欠かせない位置情報

位置情報は私たちの身の回りのあらゆるサービスで使われており、生活を便利にそして豊かにしてくれています。
例えば、初めて訪れた場所でも、地図アプリをさっと操作すれば最短距離で目的地へ導いてくれます。スポーツの分野では、走ったルートやスピード・距離を管理してくれるランナー用アプリが愛用され、ゲームの分野ではスマホ画面を通してキャラクターが現実世界に映し出されるゲームが昨年社会現象になりました。これらは全て位置情報を利用したサービスです。
今回はその位置情報を、日本においてより高い精度で提供してくれる「準天頂衛星システム」についてご紹介します。

準天頂衛星システムとは

衛星測位システムといえばアメリカのGPSが知られており30機以上もの衛星が打ち上げられています。高精度な測位のためには8機以上が必要です。一見、十分な数のように思えますが、GPS衛星は地球全体に配置されているので1つの地点からはそのうちのわずか6機程度でしか測位することができません。またその6機もビルや樹木で電波が遮られてしまうものもあり、全てが正確な測位をできているわけではありません。

そこで注目されるのが「準天頂衛星システム」です。準天頂衛星とはGPSを補う信号を出す衛星のことで、日本のほぼ真上(準天頂)に長時間滞在できるよう工夫された軌道で飛んでいます。その衛星を複数組み合わせた測位システムが準天頂衛星システムで、このシステムによりGPSだけでは即位が難しかった都市部や山間部でも安定した測位ができるようになります。(図1参照)

GPS衛星を補う準天頂衛星
図1.GPS衛星を補う準天頂衛星

この準天頂衛星は‘17年6月1日に2号機の打ち上げが成功し、年内にさらに2機を打ち上げて4機体制とする計画です。これによって位置情報の精度が飛躍的に向上し、これまで10メートル前後だった誤差が、数センチに縮まるといわれています。さらに安定した測位のために‘23年には7機体制も計画されています。測位衛星は他の国々でも打ち上げられ、ロシアのGLONASS、EUのGalileoなど同様のシステムが構築されています。

活用例

位置情報がより正確になることで、従来にないサービスが可能になると期待が高まっています。

●自動走行分野
自動走行に必要な3次元地図の整備に活用されます。3次元地図は計測レーザーやカメラなどの機器を搭載した車両を使って、道路の形状や周辺の3次元位置情報を取得することで作成します。この際に精度の高い位置情報を使うことで、計測レーザーの位置決めを高精度かつリアルタイムに実現し、路面の調査・管理を自動化することができます。

●スポーツ分野
これまでもマラソンやランニングにおいて走行ルートやペース配分の情報は得ることはできましたが、コース取り結果のような細かな情報も得られるようになります。これによってランナーはコース戦略のような高度なサービスを受けられるようになります。この正確な位置情報は、マラソンだけでなくサッカーやラグビーといった、チーム競技での戦略分析で重要となる選手の位置関係の把握にも活用できます。

●農業分野
有人と無人の協調作業システム(通常の有人トラクターに無人トラクターを併せて稼働することにより、2台同時作業を可能とするシステム)が実現してきていますが、準天頂衛星システムを活用することによって、トラクターの高精度な運転アシスト・自動走行の実現が期待されています。(図2参照)

高精度な位置情報
図2.様々な分野で活用される高精度な位置情報

準天頂衛星システムは日本の衛星システムですが、日本と経度の近いアジア、オセアニア地域でも利用できることから、それらの地域での利用拡大を進めていくことも計画されています。ご注目下さい。

2017年8月

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