これからは、コレ!旬なIT技術やこれから主流となりつつあるIT技術に関する情報をご紹介します。

2016年11月01日

AR(拡張現実)
SFの世界がますます現実に

高まるARの認知度

社会現象にもなっているスマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO」。スマートフォンの画面越しに映った自分の部屋のソファに人気のキャラクターが乗っている、そのような体験ができるのが人気の理由の一つのようです。これに利用されているのが、AR(Augmented Reality:拡張現実)という、コンピュータで作られた仮想のモノを現実世界に重ね合わせる技術です。似たような言葉でVR(Virtual Reality:仮想現実)という技術がありますが、VRは見えている世界すべてをコンピュータで作り出すことを言い、そこに現実のモノはありません。このコラムでは2009年にもARを取り上げました(※1)。その当時はまだ軍事利用等の限られた分野での利用が主で、その他の応用例も期待の域に留まっていました。しかしその後、スマートフォンの普及に伴って一般消費者向けのサービスや企業内での利用が拡大し、SF映画やアニメでしか実現できなかったことが、私たちの日常の中で普通に目に触れるようになってきています。

※1 現実世界に仮想世界を重ね合わせるAR(オーグメンテッドリアリティ)技術
https://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/23/

ARの活用例

現在のARには大きく3つの種類があります。

  • ロケーションベースAR
    スマートフォンなどのGPSや電子コンパス(※2)から位置情報を割り出し、その場所に関する付加情報を取得、表示します。冒頭のポケモンGOはこのロケーションベースARを利用しています。その他の事例としては、経路案内サービスが挙げられます。経路をナビゲートしてくれるスマートフォン向けアプリは多くの方が利用されていると思いますが、スマートフォンのカメラを通して映った実際の道路に経路を示す矢印が現れ、周辺の建物からは目的地であることを示す吹き出しの他、どんなテナントが入っているかなどの情報も表示されます。画面の中の地図と周囲の状況とをきょろきょろと確認するのとは違い、実際の視線の先にある道路や建物を見ながら情報を確認できるので、目的地も一目瞭然です。
    ※2 電子コンパス:磁気センサーで方位を割り出す電子機器。スマートフォンなどに搭載され、機器の向きに合わせて地図を回転させるなどの機能を実現できる。

ロケーションベースARの例
図1. ロケーションベースARの例

  • マーカー型ビジョンベースAR
    情報を表示したい場所にマーカーという目印となる図形(図2)を置き、そのマーカーを認識することで表示位置や付加情報を特定し、表示します。家具メーカーなどでは、マーカーを企業のサイトページから印刷して部屋に配置し、専用アプリをダウンロードしてスマートフォンのカメラを向けると、マーカー上に家具が現れ、配置シミュレーションができるサービスが各社で提供され始めています。また、製造業では現場での保守・点検業務に利用する企業も出てきています。作業箇所にマーカーを設置し、タブレット端末のカメラで映すと作業手順や保守履歴、注意事項などが表示されます。さらに点検結果の入力もその画面上で行えます。現場でタイムリーに作業内容や過去の履歴を確認することができる上に注意事項も視覚的に再掲されるため、ヒューマンエラーの予防、教育やノウハウ共有のコスト削減という効果があります。

マーカーの例
図2. マーカーの例
マーカー型ビジョンベースARの例
図3. マーカー型ビジョンベースARの例

  • マーカーレス型ビジョンベースAR
    マーカーを使わずに、実在している画像や物体そのものを認識することで付加情報の表示位置を特定します。たとえば、通信販売においては、カタログ雑誌の写真を認識して、商品の利用動画を見ることができるサービスを提供している企業が増えてきています。また最近では、大きなディスプレイに全身を映して、バーチャルの試着ができる店舗が出てきています。人の体形を認識して試着する服を調節し、動きに合わせて服も揺れ、色違いの服も瞬時に切り替えられます。マーカーレス型は画像認識や空間認識の高度な技術を要しますが、マーカーを配置する必要がないため、バーチャルのモノをよりリアルに感じることができます。

マーカー型ビジョンベースARの例
図4. マーカーレス型ビジョンベースARの例

ARのこれから

スマートフォンやタブレット端末を利用する事例を多く挙げましたが、メガネ型などのウェアラブルデバイスなどを利用したARの開発も引き続き進められています。ハンズフリーで情報を確認できるため、たとえば前述の工場の保守・点検で利用すれば、作業を中断することなく手順や注意事項を確認でき、さらなる作業の効率化が期待されます。ARは私たちの日常生活、そしてビジネスの場においても着実に浸透してきており、SFのような世界は今後もますます現実味を帯びていきそうです。

これからのARイメージ
図5. これからのARイメージ


2016年11月

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